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FDAが有用性を実証できていない迅速承認抗がん剤にさらに厳しく対処

2011-06-23

(キーワード: FDA、迅速承認、市販後有用性実証試験、クリアーできない新薬への対処)

 抗がん剤は米国でも日本でも患者へのすみやかな供給を重視するとして、延命効果などの実証を待たず代替エンドポイントでの試験成績で承認されることが多い。しかし、米国と日本との違いは、米国では企業に迅速承認後に実証試験で有用性を示すことを義務付け、実証できない時はFDAは市場撤去させられると定めていることにある。

 米国FDA(食品医薬品庁)の抗がん剤審査部門は、国立がん研究所のジャーナル(J Natl Cancer Inst)2011年4月20日号に「抗がん剤の迅速承認: FDAの経験」のレビュー論文を掲載した。FDAは、迅速承認後長い期間を経過しても臨床的有用性を示せない新薬が多いが、効かない薬で患者を副作用の危険にさらすことにつながるので、/彗承認時にすでに実証のための臨床試験を開始していることを企業に求める、⊆他擇遅れている企業に1000万ドル(約8億円)以内の罰金を科す、ことを考慮していると明らかにした。論文の概略を紹介する。
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 がん患者にすみやかに新薬を届ける迅速承認制度が1992年にスタートして、2010年7月1日までに、FDAは35の抗がん剤の47適応に対し、迅速承認を行った。47適応のうち、その後臨床有用性が実証できたのは26にとどまっており、それらは通常の承認に進んだ。迅速承認から通常の承認までの期間は、中央値が3.9年間(範囲: 0.8-12.6年)であった。

 残り21の適応のうち、3つは実証試験を終えたが臨床的有用性を示せず、マイロターグ(引用者注: 日本では販売継続中)とアミホスチン(注: 日本では未販売、米国では該当適応を削除)は市場から撤退し、イレッサは対象患者を制限した(注: この論文が受理された後の2011年2月に企業が市場撤退を表明) (※1)。これらはいずれも反応率をエンドポイント(効果の指標)とした比較薬のない臨床試験の成績で迅速承認されていた。イレッサは迅速承認から販売制限まで2.4年と比較的短かったが、マイロターグとアミホスチンは迅速承認から市場撤退までそれぞれ10.1年、10.0年も要している。あとの通常承認に至っていない18適応のうち、実証試験を終了しFDAがレビューしているものが4ある。14適応はまだ実証試験が終了していなく、長いものでは迅速承認から10.5年が経過している。

 これらのことは、効果のない医薬品を患者が使用し、副作用にさらされる危険性を含むものである。対策としては、FDAが迅速承認を与える前に実証試験が開始されていることを求めることがある。このような要求は、新適応の開発プランの一部分として迅速承認を位置付けることに役立つだろう。企業が実証試験をきちんと行わないことのみを理由に市場から撤去するのは、企業に対する制裁としては適当でも、がん患者の利益に最も即したことではないだろう。それは魅力的な選択肢ではなく、がん患者に対してなすことでもないだろう。議会は2007年FDA再生法を可決し、企業の実証試験の不履行に対し、FDAが1000万ドルの罰金を科す権限を付与した。FDAはこれを企業の不履行を扱う効果的な新手段と信じている。
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 最初に書いたように、日米ともに抗がん剤を迅速に承認しているが、そのあとの臨床的有用性の実証試験を宿題に課すことや、実証試験で臨床的有用性を示せなかった場合の措置など、日本は極めて甘い。例えば急性骨髄性白血病治療剤マイロターグ(一般名ゲムツズマブオゾガマイシン)では、FDAは臨床的有用性の実証試験を宿題に課し、実証できなかったマイロターグは米国市場から撤退した(※2)。しかし、日本では実証試験は課されず、有効性が確認されないまま現在も販売が継続されている。また肺がん治療剤イレッサ(一般名ゲフィチニブ)では、米国で宿題として課された実証試験でイレッサは臨床的有用性を示せず、FDAはイレッサの新規患者への投与を禁止し、その後アストラゼネカ社は米国市場からの撤退を表明した。イレッサの場合は日本でも実証試験の実施が承認条件となったが、イレッサはこの試験で臨床的有用性を示せなかった。しかし、厚生労働省は何の措置もとらなかった。

 FDAがこの論文で書いているように、そうしたことは効果のない医薬品を用いる患者を重篤な副作用に遭遇させる危険にさらしている可能性がある。迅速な改善が必要である。 (T)