注目情報

  1. ホーム
  2. 注目情報

米循環器専門誌が「クレストール」の危険性を指摘

2005-06-28

米循環器専門誌が「クレストール」の危険性を指摘
  (キーワード:クレストール、ロスバスタチン、米循環器専門誌「サーキュレーション  」論文、市販後研究、同効他剤との有害副作用比較)

 先月の「注目情報」では「クレストール(一般名:ロスバスタチン)特集」(※1)を組み、このスタチン系コレステロール低下剤に関しては、承認前の段階から、他のスタチン剤と比較して、有害副作用が多かったことを紹介した。最近、米国の代表的な循環器専門医学雑誌「サーキュレーション」(オンライン版)に、FDAの市販後有害副作用報告やIMSの処方せん調査成績を分析し、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンなどの他のスタチン剤との比較を行った論文(※2)が発表されたので紹介する。なお、この論文については、ワシントンボスト紙(2005年5月24日付)(※3)も報道しており、米国の代表的消費者団体「コンシューマーズ・ユニオン(消費者連盟、CU)は、承認後の医薬品の安全性を調査・監視する独立行政機関を早急に設置するよう議会に要請した(※4)。今年3月に
FDAに対してクレストールの市場撤去を求める要望書を提出した米国の市民団体パブリック・シティズンの代表者シドニー・ウルフ氏は、今回の研究は彼らの結論を確信させるものであり、これらの有害副作用を引き起こすことは承認される前からわかっていたことであると語った。

   「サーキュレーション(循環)」誌の論文要約:

   標題「日常診療で用いられたロスバスタチンの安全性 市販後の分析」

   クレストールと、その同効薬アトルバスタチン、シンバスタチン、プ
   ラバスタチンの有害副作用を比較した論文である。著者たちが最も注
   目した有害副作用は横紋筋融解とその結果生じる蛋白尿、腎不全など
   の各種腎障害である(著者たちは、これらの有害副作用を一括して、
   “複合副作用”と呼んで、他の有害副作用と区別して取り扱っている)。
   有害副作用の発生頻度は100万処方につき何件の有害副作用が発生する
   かで比較してある。有害副作用のデータ収集の期間は2003年10月から
   2004年9月の1年間にFDAに報告されたものであるが、新規薬であるクレ
   ストールと従来から使われていた他の同効薬とでは、投与患者の選択
   自体に偏りが生じる恐れもあるため、それぞれの薬が新薬として発売
   された当初の期間(発売後1年)での有害副作用報告データも比較・分
   析してある。

   どちらの期間で比較しても、“複合副作用”の発生はクレストールが
   圧倒的に多く、シンバスタチンの2倍以上、プラバスタチン/アトルバ
   スタチンの6-8倍以上の発生頻度だった。また、肝障害の発生やその他
   の全有害副作用発生頻度に関しても、クレストールが他剤よりも明ら
   かに多かった。肝障害の有害副作用で市場から撤去されたセリバスタチ
   ンの発売後1年と比較しても、クレストールの肝障害報告の割合はそれ
   と有意に異なるものではなかった。

   著者たちは、今回の分析は、日常診療で普通に用いられる患者集団に
   対する通常用量のクレストールの同効他剤と比較しての相対的な安全性
   について、これまで指摘されている懸念を支持するものであり、医師は
   他のスタチン剤を優先して用いるべきだと結論づけている。
   
                             (T)