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米国FDAの科学者が現在のFDAでは危険薬から国民を守れないと証言

2004-12-22

米国FDAの科学者が現在のFDAでは危険薬から国民を守れないと証言
 (キーワード: FDAリスク管理の破綻、米国上院公聴会、グラハム証言、バイオックス、バイオックス相当の危険薬剤)

10月の注目情報で、心血管リスクのため主力製品であるCOX-2阻害薬バイオックスの販売をメルク社が中止したことを取り上げました(※1)。その後、メルク社やFDA(食品医薬品局)がもっと早くからリスク管理を適正に行っていれば、バイオックスの売上高から推測される心血管系の有害副作用による多数の被害者の発生を防ぐことができたのでないかと大きな問題になりました。FDA自身がスポンサーとなって行った大規模な研究結果からも被害が予測される成績が得られているのを、FDAの科学者が学術雑誌に発表するのをFDAが妨げていたなどもあり、米国上院がFDAの安全性管理を追及する公聴会を開催する事態となりました。次に大筋を紹介するのは公聴会翌日のUSAツディ紙2004年11月19日の報道です(※2)

  [科学者がFDAシステムの破綻を証言 
  FDAが他のバイオックス相当薬を止められない疑い]

  FDAの科学者が上院の委員会で、安全性問題で市場から撤去されたバイオ
ックスのような恐るべき悲劇や根深い規制上の失敗に対し、FDAが事実上
それらを防げる状況にないと証言した。

FDAの医薬品安全性部門科学医学副部長であるディビッド・グラハム氏は、
財政委員会に対し、委員会や米国市民がバイオックスで今起こっているこ
との重大さを理解することが重要で、このことはFDAとその医薬品評価研
究センター(CDER、シーダー)の破綻を示していると証言した。

グラハム氏は、バイオックスと同じ運命をたどるのでないかと考えられる
5つの他の危険な医薬品名をあげた。メリディア、クレストール、アクタ
ン、セレベント、ベクストラの5薬剤である。

メルクは、自社が行った試験で、バイオックスを服用した患者がプラセボ
を服用した患者よりも心臓発作や脳卒中を起こしやすそうだと知って、バ
イオックスを市場から撤去した。グラハム氏はメルク社自身が行った研究
データから推定して、バイオックスはこれまでに13万9千人に対し心臓発
作や突然の心臓死を引き起こしていると述べている。

バイオックスが販売承認される以前から、メルク社やFDAはバイオックス
が心血管の有害副作用に関連していることを知っていたと批判されている。

グラハム氏によると、バイオックスの市場撤去よりも1か月前に、メルク
社はフランスで開かれた学術集会で、FDAがスポンサーとなった研究を発
表しており、その研究では、バイオックスが同じCOX-2阻害剤のセレブレ
ックスよりも心臓発作や突然の心臓死を引き起こしやすいことを見出した
ことを発表していた。

グラハム氏は、先月財政委員会の調査委員たちに、FDAがこの成績を公表
するのを妨げたと語った。これに対しFDAのクロゥフォード局長代理は、
直接名指しはしなかったものの、グラハム氏がFDAの通常の論文審議手続
きをとらずに英国のランセット誌やBMJ誌に投稿しようとしたと、非難し
ている。

 なお、グラハム氏が、FDAシステムの破綻を示す例としてあげている5薬剤の一般名、適応は次のとおりです。

 メリディア 一般名シブトラミン 肥満症
 クレストール 一般名ロスバスタチン コレステロール低下剤
 アクタン 一般名イソトレチノイン にきび
 セレベント 一般名サルメテロール ぜんそく
 ベクストラ 一般名バルデコキシブ COX-2阻害薬 関節炎
                                    (T)