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トップ10の高収益医薬品に関連した臨床ガイドラインの著者たちに、公開されていない大きな金銭的利益相反が存在

2019-01-15

(キーワード: 臨床ガイドライン、高収益医薬品、金銭的利益相反、ガイドラインの客観性信頼性)

 臨床ガイドラインは臨床での医薬品処方の指針であり、医学的経済的に厳しく客観的なものでなければならない。ガイドラインの著者たちと掲載された医薬品を販売する企業との金銭的な利益相反関係はガイドラインの客観性に多大な影響を及ぼす可能性がある。トップ10の高収益医薬品に関係する臨床ガイドラインの著者たちについて、製薬企業から医師への情報公開された金銭支払いデータを用いて調査した結果が、JAMA内科学誌電子版2018年10月29日号に報告されているので概要を紹介する。
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 米国医学アカデミー(旧米国医学研究所)は臨床ガイドラインへの製薬企業への影響を制限する政策をとっているが、ガイドラインはそれをまれにしか守っていないと言われる。われわれは高収益医薬品に関連したガイドラインにおいて公表していない金銭的利益相反が多いという仮説を立てて、調べた。

 研究は2013年1月1日から2017年12月31日の期間に行った。2016年におけるトップ10の高収益医薬品は、医薬品情報ウェブサイト PharmaCompass により同定し、この情報を証券取引委員会の記録と企業報告により確認した。これらの医薬品に関連したガイドラインの著者に関する利益相反は、公的に得られるデータを用いて調べた。

 その結果、10の高収益医薬品に関係した18のガイドラインの160人の著者のうち、91人 (56.9%)が金銭的利益相反を有していた。そして41人の著者 (25.6%)はそのことをガイドラインで公表していなかった。公表されていない支払いの多くは1万ドル(約110万円)ないしそれ以上であった。米国医学アカデミーは、文書での情報公開、ガイドライン作成委員長は利益相反を有しないこと、委員会メンバーで利益相反を有するメンバーは少数派であることなどを定めているが守られておらず、18の委員会のうち14は委員長に利益相反が存在し、10の委員会は利益相反のあるメンバーが大部分であった。そしてすべての金銭的利益相反を公開した臨床ガイドラインは皆無であった。
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 「利益相反」とは、公正になされなければならない判断が、金銭的な利害関係や個人的な成功への願望などでゆがめられる可能性のある状況をいう。臨床ガイドラインは国民の生命と健康に直結し、利益相反でゆがめられない客観性をもったものであることが強く求められる。

 このトップ10の高収益医薬品に関連する臨床ガイドラインについての研究結果は、金銭的利益相反に関する対処を強める必要を強く示している。利益相反に対する対処の選択肢は、①開示する、②管理・監督する、③禁止するの3段階があり、これらを正しく組み合わせて用いることが重要である(※1)。臨床ガイドラインの利益相反の場合、開示は全部のガイドラインとその著者の全員に必要であるとともに、米国医学アカデミーが示しているように、作成委員長が利益相反を持たないこと、利益相反をもった著者が少数であることなどの管理・監督の徹底が必要である。

 日本においても、金銭的利益相反というのは人々にわかりやすい物差しであるだけに、開示の徹底と必要な管理を強めていきたい。 (T)