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「利益相反」について米国パブリック・シティズンが国立科学アカデミーでプレゼンテーション

2008-02-12

(キーワード: 利益相反、パブリック・シティズン、国立科学アカデミー、プレゼンテーション)

「利益相反」とは、公正になされなければならない判断が、金銭的な利害関係や個人的な成功への願望などでゆがめられる可能性のある状況をいう。前者を金銭的利益相反(Financial Conflicts of Interest)、後者を心情的利益相反(Intellectual Conflicts of Interest)という。新薬の開発や市販後の副作用への対処では、利益相反が重大な影響を及ぼし、国民の生命と健康を損なう危険がある。
 ここでご紹介するのは、医薬品や医薬品をめぐる制度を市民・患者の立場で監視している米国の市民団体パブリック・シティズン・ヘルスリサーチグループのピーター・ラリー医師(副代表)が、米国国立科学アカデミー医学研究所(IoM)の「医学研究・教育・業務における利益相反委員会」からの依頼で、2007年11月5日に同委員会で行った「利益相反」についてのプレゼンテーション(※1)の要旨である。
 「開示さえすれば足りる」とする、日本においても顕著な最近の風潮を強く批判している点などが注目される。
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 利益相反のフレームワーク(枠組み)は、利益相反への対処の観点から、3つの選択肢がある。(1) 法的規制 (legal restrictions)、(2) 行政的規制 (policy restrictions)、(3) 利益相反関係の開示 (disclosure) の3つである。言葉を変えれば、利益相反を(1)禁止するのか(ban)、(2)管理・監督するのか(manage)、(3) 開示するのか(disclose)、である。

 法的規制の利点は、利益相反を完全に除去することができることである。ある環境下ではとりわけ費用対効果がよい。しかし、利益相反の取り扱いの最近の傾向は、開示に重点が置かれており、それが唯一の対処という事例もある。
 開示は確かに重要であるが、専ら開示に頼ることになれば、責任回避の口実を与えることになる。実質上、開示は、執筆者が製薬会社から5万ドル(約600万円)の株を受け取っているということの意味を理解し判断することを消費者に求めて責任を転嫁しているのである。
 重要なことは、この3つの対処を正しく組み合わせて用いることである。

 しばしば、利益相反には、金銭的利益相反と心情的利益相反の2つがあると言われる。そして、その議論が金銭的利益相反を特に重視しない理由として使われている傾向がある。
 心情的利益相反も重要だが、それは金銭的利益相反とたやすく区別することができる。
 金銭的利益相反は持っている人もいれば、持っていない人もおり、定量化が可能である。
一方心情的利益相反はどこにでもあり、また金銭的利益相反と同じようには定量化できない。そして重要なことは、金銭的利益相反は対処が可能である(remediable)が、心情的利益相反は対処に困難がある(non-remediable)ことである。
 したがって、金銭的利益相反はとりわけ重要であり、特別な注意を払う必要がある。

 われわれは次のことを結論としたい。
(1) 利益相反が利害に実際にどのように影響をもたらしたかの研究はまだ限られたものしかない。この委員会が、今後の研究がどのように行われるのが望ましいかを具体的に示すという、有用な役割を果たすことを期待する。
(2) 金銭的利益相反はとりわけ重要であり、特別な注意を払うに値する。心情的利益相反の存在を、より対処が可能な(remediable)金銭的利益相反の問題から注意をそらすことに用いてはならない。
(3) 利益相反レベルが低い、あるいは利益相反を有しない諮問委員会委員/論説執筆者は、十分な努力さえすれば必ず集めることができる。
(4) 法的規制や行政的規制で利益相反を予防できるときに、利益相反の開示はそれに置き換わるものではない。  (T)