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医薬品監視: 製薬企業を信頼するな

2016-04-19

キーワード(医薬品監視、副作用報告、害作用、患者副作用直接報告制度、市販後調査)

 製薬会社には自社の製品の害作用が明らかになることを望まないという利益相反がある。それにもかかわらず、日本だけではなく欧米の規制当局も医薬品監視活動における害作用報告の収集などについて、製薬会社に頼る傾向を強めている。(※1)

 以下は、製薬会社からの害作用報告の問題を指摘したフランス・プレスクリール誌165号記事(2015.11)(※2)の要約である。
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 製薬会社が時々、害作用データをもみ消すことは様々なスキャンダルが示している。しかも、そのスキャンダルは1回限りではない。

 米国のISMP(薬物療法安全性研究所)が2013-14年のFDA医薬品監視システムに集められたデータを分析したところ、84万7000件の害作用の報告のうち、患者や医療従事者が直接報告したものは2万9000件にすぎず、大多数(96.5%)は製薬企業から報告されたものであった。

 しかし、患者や医療従事者からの直接の報告は、製薬会社からのそれと比較し、より完全な報告であった:

 例えば前者は年齢、性別、報告日を含んだものが81%であったが、後者では46%に過ぎなかった。
 重篤な害作用については、前者は85%に対し、後者は49%だった。

 患者が死亡した場合は、製薬会社からの報告はほとんど役に立っておらず、そのうち28%のケースでは、薬がどのような役割を果たしたか不明瞭であった。

 また、製薬企業からの先天的な奇形に関する報告のうち、十分に包括的であったのは25%にすぎなかった。

 要するに、この新しい研究と我々の長年の経験が示しているのは、製薬会社には薬の問題に関連した質の高いデータの提供は期待できないということである。

 そして、政府が医薬品市販後調査の改善について製薬会社に頼る傾向があることや、政府が医薬品製造承認の臨床試験データに対しての要求事項を緩和することなどは、到底受け容れることはできないのである。
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 厚生労働省の報告によると、2015年4月1日〜7月31日の副作用報告件数は1万6967件で、そのうち医師や薬剤師など医療関係者からの副作用報告は1538件(9.06%)と日本でも圧倒的に企業報告が多い。

 製薬会社が害作用報告を過小評価する傾向はイレッサ薬害裁判でも明らかであり、製薬会社の害作用報告だけに頼り切っているのは危険である。 医療関係者には積極的な害作用報告の姿勢が求められている。(G.M.)