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欧州の医薬品監視: 製薬企業への外注が増加しているのは重大な懸念

2015-04-13

(キーワード: 医薬品監視、EU、製薬企業への外注、プレスクリール誌)

 医薬品はその有効性・安全性などについて確認され販売承認されるが、承認前の臨床試験例数は限られており、市販後の安全性監視が非常に重要である。EUの安全性監視体制は、近年フランスのメディアトール薬害を受けて補強がされた。そうした前進の中に重大な後退があることを、フランスの民間医薬品監視団体が発行するプレスクリールインターナショナル誌2014年12月号 1)が問題提起している。
 以下はその要旨である。
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 欧州の新たな医薬品監視規制は、2010年の終わりに採択され、2012年末にフランスのメディアトール薬害を受けて補強改訂された。新たな欧州医薬品監視リスク評価委員会(PRAC)の役割が強化された。EU加盟国の患者は、医療機関を介さずとも直接医薬品規制庁に害作用報告ができる権利が確立された。EU各国の医薬品規制庁は、透明性を高めることを求められ、公衆の害作用情報へのアクセスが改善された。

 そうした前進面のなかで、1つの大きな後退が存在する。製薬企業は彼らの製品の害作用が明らかになることを望まないという利益相反があるにかかわらず、製薬企業に害作用報告の収集、記録、解釈における中心的な役割を委ねたことである。

 製薬企業は、気付いた害作用報告を巨大な欧州の中央化されたデータベース(Eudravigilance)に、医薬品規制庁抜きで記録するよう依頼される。製薬企業は、規制庁に定期的に提出を求められている便益リスク評価報告の一部分として、彼らの製品の「リスク便益バランスの科学的評価」を生みだす責任を手中にしている。報告はEU全体のレベルで、2つの加盟国(報告担当者とそのパートナー)が分析する。その結果ハーモナイズされた決定がなされる。しかし、これらの決定は製薬企業があらかじめ分析したデータに基づいてなされているのである。

 医薬品監視に対する中央化された量的アプローチを発展させる上で、自発的害作用報告の独立したチーム、とりわけ医薬品監視センターによる分析を放棄すべきでない。
さらに、欧州医薬品庁の独立性は、”床舛里發箸箸覆襯如璽燭、あらかじめ企業が解釈したデータにほとんど全面的に依存している、fee-for-service(サービスに対する手数料の支払い)システムのもとで財政的に製薬企業に依存していることで、土台を崩されている。

 対照的に、米国では2010年以降、年1億5000万ドルの公的資金が疫学的研究と比較試験に投じられており、FDAは能動的な医薬品監視を行う原資を有している。またFDAはオリジナルな臨床データに基づいて独自の安全性レポートの作成を進めている。

 欧州医薬品フォーラム(MiEF)と医薬品独立情報誌国際協議会(ISDB)は、医薬品監視の原資を生み出す対案として、製薬企業の売上高ないし販促費に応じた目的税の支払い、また、ベルギーが2012年3月以降実施しているように医薬品パッケージの流通ごとに課税してそれらを基金とするよう提案したが、実現していない。
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 ここでは、製薬企業は製品の害作用が明らかになることを望まないという利益相反をもつという市販後監視の問題点が書かれているが、医薬品開発の臨床試験を製薬企業の責任で行っていること自体も大きな利益相反(責務相反)である。これらの利益相反の弊害の解決には、製薬企業への規制・監視を強めることとともに、公的資金での臨床試験や医薬品監視を進めていくことも重要である。日本はともすれば遅れがちだが、ここで挙げられている製薬企業の売上高に応じた目的税(スペイン)、販促費に対応した目的税(イタリア)、医薬品の流通に対する目的税(ベルギー)による公的資金の捻出、米国の国家財政の公的資金への支出などにも学び、公衆衛生を発展させていくことが求められている。  (T)

文献
1) Prescrire International 2014 ; 23 (155) : 302-307

関連資料・リンク等