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コクランレビューで、タミフルの効果は限定的で有害性があると指摘、使用指針の見直しを求めBMJ(英国医師会雑誌)と共同声明を発表

2014-06-05

 英国ではBMJが臨床試験の全データ公表を促すキャンペーンを続けており、2012年12月には、NICE(国立医療技術評価機構)の対応を編集長が厳しく批判した(※1)。
 また、議会決算委員会が政府のタミフル備蓄を疑問視し、コクランレビューによる新たなレビューが出た時は、過去の有効性判断を見直す必要があると指摘した(※2)。
 そのコクランレビューは、2014年4月10日に公表された。検討対象にした臨床試験データは、欧州医薬品庁(EMA)をはじめ、グラクソ・スミスクライン社及びロシュ社から得た計107件の臨床試験総括報告書である。FDAやEMA、日本の規制当局のコメントも入手した。
 結果、タミフル(オセルタミビル)の試験が20件(対象者合計9,623人)、リレンザ(ザナミビル)の試験が26件(14,628人)検討対象にされた。

 「タミフルの無効と害が証明される−−国際研究グループ(コクラン共同計画)の最新の結果で−−」(「薬のチェックは命のチェック」インターネット速報版No168)が、上記コクランレビューの要約を日本語で掲載している。以下、その「筆者の結論」部分を紹介する。

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 オセルタミビルおよびザナミビルは、成人でのインフルエンザ症状の緩和にかかる時間を短縮する非特異的効果をわずかに有するが、喘息の小児には同様の効果は認められなかった。薬剤を予防的に使用した場合には、(研究者の定義による)症候性インフルエンザの発症リスクを減少させたが、主要評価項目であるインフルエンザ様症状には効果がなかった。オセルタミビルまたはザナミビルによる治療試験における肺炎等、インフルエンザ合併症への効果については、診断が定義されていないため、効力の有無の判定が不可能である。
 オセルタミビルの使用は、成人で嘔吐、吐き気、精神症状、腎イベント、また小児で嘔吐の有害反応リスクを増大させる。オセルタミビルと比べてザナミビルの生体利用率が低いことが、ザナミビルの毒性が低い理由であるかもしれない。
 インフルエンザの予防または治療のいずれかのために、上記ノイラミニダーゼ阻害剤の使用に関して意思決定を行う際には、利益と害のバランスを考慮すべきである。インフルエンザウイルスに対する特異的な作用機序を製造メーカーが(有効性の根拠として)提示しているが、これは、臨床的エビデンスには合致しない。

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 以上のようなレビュー結果を公表した4月10日に先立って行われた記者会見では、「BMJ誌とコクラン共同計画は、政府と医療行政官らに対し、タミフル使用のガイダンスを最新のエビデンスに基づき見直すよう求める」とのプレスリリースが発表されている(上記「薬のチェックは命のチェック」インターネット速報版No168で翻訳が掲載されている。)。

 「世界の全処方量の約8割が消費された」と言われる日本において、この重要なニュースと、それに対する一般マスコミの報道が少ないのは理解しがたいことと言わざるを得ない。
                                                            (K.K.)