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EU諸国が臨床試験を整備する法律を承認へ 煩雑な規制は単純化される

2014-06-05

(キーワード:EU臨床試験指令、臨床試験結果、情報公開、臨床試験事前登録制度、EU政府、EU議会)

 ディオバン事件などの臨床試験の不正が問題となっているわが国には、治験(新薬を承認するための臨床試験)以外の臨床試験に対して法的規制が存在しない。
 一方、EUでは2001年に導入されたEU臨床試験指令により、EU各国ですべての臨床試験について、国際的な臨床試験の基準であるICH-GCPに準拠することになり、煩雑な手続きなどにより大学における臨床研究が減少していることが問題となっている(※1)。被験者の権利保護や臨床試験の質を担保する法的規制は強化されるべきであるが、すべての臨床試験について、新薬開発のために製薬企業が行う臨床試験と同じ規制を適用する必要性は必ずしもない。
 以下はこうした課題に対するEU政府の対応を伝えるBMJオンライン(2013年12月23日)の記事を要約したものである。

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 2001年以来実施されてきた現在の規則は過剰に官僚的であると広く批判されてきた。EUではヒトを対象とした医薬品の臨床試験はそうした制度の中で顕著に減少していた(2007年は5000だったが、4年後は3800に減少した)。

 この度、EU政府は、臨床試験の承認手順をスピードアップし、すべての臨床試験を中央データベースに登録し、試験結果を情報公開するEU全体に施行される法律を承認した。欧州政府と欧州議会が2013年12月の第2週に合意した内容では、より単純でより均一な要求事項に換えられる。
 新たな法律では、臨床研究を「臨床試験」、「低介入試験」、「非介入試験」に分類し、「低介入試験」(通常の診療と比較して被験者の安全にわずかのリスクしかもたらさないもの)に対しては、同意の免除や補償要件の変更を認めるなどの特異的な条項が設けられる一方で、承認過程での倫理委員会の役割が明確化され、患者保護についての規制が強化され、どのようにインフォームドコンセントを得るかの詳細が示される。
 すべてのEUの臨床試験をEUの公式なサイトへ強制的に事前登録することは、臨床試験の実施内容と結果についての透明性を高める。今は半分の結果しか発表されておらず、ネガティブな結果を知ることは重要である。販売承認が得られれば詳細なサマリーが公式に発表されねばならない。この要求に反した場合は罰金を課せられる。
 コクラン協同計画の最高経営責任者であるマーク・ウィルソンはこの結果を「ヨーロッパ中の患者、開業医、および政策立案者のための勝利」と評した。新法が正式に立法されるには、2016年に施行される数ヶ月前にEU政府とEU議会で公式に承認されなければならない。

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 欧米では、臨床試験全体が法的規制を受け、臨床試験の事前登録や情報開示が進められてきている。欧州医薬品庁(EMA)の承認後の医薬品の情報開示に対しては、米国の製薬企業が欧州裁判所に提訴し、情報公開を差し止める判決が出されるなどの混乱もあったが、EU最高裁が下部裁判所に差し戻す決定をしている(※2、※3)。

 欧米なみの規制を日本の臨床試験に求めると、日本の臨床試験が減る可能性があるとの指摘がある。しかし、全ての臨床試験には被験者の権利保護と臨床試験の質を保証する法的な規制が必要であり、試験結果が信頼できない臨床試験は規制強化で駆逐されるべきである。EUの低介入試験に対する合理的な対応などを参考にすれば、本当に必要な臨床試験が行える環境は作れるはずである。

 EU政府の対応は基本的な法的枠組みがある前提での対応であり、臨床研究の不祥事の報道が相次ぎ国際的信頼問題となっているわが国は、国際的に通用する法規制の整備を早急に進める必要がある。
                                                              G.M