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臨床試験データ開示に関する欧州裁判所の対応を受け、ヒーリー教授らが副作用収集 と請願を呼びかける

2013-09-24

(キーワード: 情報開示、裁判所が差し止め、製品ボイコットに替わるもの、副作用情報の収集)

欧州医薬品庁(EMA)は、2010年の文書情報開示政策で承認後の医薬品の臨床試験情報開示を進めていた。
すでに2010年11月以来、613の開示請求に対し、190万ページを超える開示を行ってきた。
そして、EMAは、2014年1月から完全開示を予定していた。EMAの情報開示政策は製薬企業グラクソスミスクライン(GSK)によっても支持されている。

ところが、米国の製薬企業2社、AbbVie社(Abbott Laboratories社の子会社、該当製品Humira[adalimumab])及びIntermune社( 該当製品Esbriet[pifenidone])が、欧州裁判所に対し、商業利益を損ねる、著作権法に違反するなどの訴えを起こし、欧州裁判所は製薬企業の主張を認め、最終判決が出るまで開示をしないよう命令した。

このため、混乱が生じている。
イギリス医師会雑誌(BMJ)などはEMAが予定通り公益のための情報公開を進めるよう運動し、欧州議会は欧州医薬品庁の情報公開方針を支持することで論議を強めている。

そうしたなかで、日本でもよく知られている英国の精神科医ディビッド・ヒーリー教授(※1)が、2社製品のボイコット運動とは逆の運動を展開している。

その運動とは、2社の該当製品について、使用者から副作用などの情報を得て、臨床データの情報公開を拒み副作用などを隠そうとしている製品の真実を明らかにしようというユニークな取り組みである。

また、2社が欧州での訴訟を取り下げ、患者レベルでのデータの情報公開を行い、米国FDAが情報開示の政策をとり、医薬品の国際貿易協定にもそれらを書き入れるよう求める請願も開始した。

以下はヒーリー教授によるブログ(※2)の記事「今一度AbbVieをしよう」」(Lets do the AbbVie again)(※3)と「AbbVie請願署名: 医薬品による副作用被害は企業秘密に該当しない」(※4)の概要である。

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[今一度AbbVieをしよう]

ボイコットは1880年代のアイルランド人の発明で、非暴力的な抵抗の新たな形であった。
製品に対するボイコットは、その製品についての社会的無視にもつながるのだが、われわれが今回とろうとする方向はこれとは逆である。
その製品に関係することへの注目を深め、データを積極的に収集するものである。

われわれは、この新たな発明を“AbbVieing”(AbbVieする)と名づける。

これは良く知られた製薬企業Abbott Laboratories社の子会社であるAbbVie社の名前から名づけられた。
AbbVie社やその販売する医薬品について述べるのを避けるのでなく、われわれはみんながAbbVie社やIntermune社の医薬品について声高に語り、彼らの医薬品の副作用を 薬のリスク情報を収集・公開するサイトRxISK.org に報告するよう要請する。

今回の問題は欧州の問題ではない。これはグローバルな問題である。

AbbVie社は、会社の利益の70%をもたらしている医薬品Humira[adalimumab]の安全性と有効性に焦点をあてた2つの臨床試験のデータの公開を阻もうとしている。

ひとつはクローン病治療における使用についてのものである。
もう一つは、Humiraをコルチコステロイドと併用した際の安全性に関するものである。

これはロシュ社がタミフルでしたと同様の科学の基準からの逸脱である。

AbbVie社が隠そうとしたデータ、Humiraの副作用の真の姿を明らかにしたい。
医薬品は情報があってこそ医薬品である。
そして副作用についての実際の姿を欧州裁判所が考慮するよう、欧州裁判所に提供したい。

AbbVie社の医薬品Humira、Intermune社の医薬品Esbrietなどについての副作用データをRxISK.orgに集中していただきたい。

医薬品の副作用は、ヘルスケアにおける最もグローバルな事項である。
われわれは世界からのレスポンスを必要としている。

[AbbVie請願: 医薬品による副作用被害は「企業秘密」に該当しない]

製薬企業は新薬の売り上げを、利点を誇大に宣伝し重要なリスクを軽視することによって、最大にする。

2013年にHumiraのメーカーであるAbbVie社は推定100億ドルのトップ売上をした。

AbbVie社とIntermune社は、臨床試験データの公開を「企業秘密」として拒んだ。
かれらの行動は、承認後の臨床試験データアクセスプログラム全体の一時閉鎖をもたらした。
このことは世界中の何百万人もの患者とかれらの医師を暗黒状態に置くものである。

われわれは、両社にEUでの訴訟を取り下げ、Humira, Esbriet、それに両社の他の製品の患者レベルのデータを情報公開するよう求める。
安全性に関わるデータは「企業秘密」として隠されてはならない。

われわれは請願のコピーをオバマ大統領とその内閣に送り、FDAがデータへのアクセスを確実にする政策をとり、また処方せん薬と医療機器のセールスを支配する国際貿易協定に書き入れるよう要求する。
 
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ここで述べられているように、このEMAによる承認後の医薬品の臨床試験情報開示の成否は欧州だけでなく、まさにグローバルな影響の大きい問題である。

今回の欧州裁判所の決定は、正式な決定がなされるまでの暫定的なものとされている。
この問題についての全面的な取り組みの強化が要請されている。

なお、ヒーリー教授が「日本からも多くの人の署名を」と呼びかけている請願賛同署名は、下記の※5のサイトで簡単にできるのでお願いしたい。 (T)
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参考資料・リンク等

※1 ヒーリー教授は、薬害オンブズパースン会議が主催した以下のシンポジウムに参加するために来日している。
2006年12月薬害エイズ和解10周年記念シンポジウム「科学の外観をまとったグローバルビジネス」
2010年6月シンポジウム「医薬品の安全性と製薬企業のマーケティング」