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ドイツのAMNOG新薬評価システムに“バイアスのある”がん患者や医師が入る余地はない

2014-01-22

(キーワード: ドイツAMNOG、新薬評価システム、保険償還、バイアス、利益相反)

 かつては、新薬の価格は企業が自由に決定して良いとしていたドイツであるが、医療費財政緊迫化のため、2011年にAMNOG(医薬品市場新秩序法)のもと、医薬品をかけた費用と得られるベネフィット(便益)の関係(費用対効果)に注目して評価し、限られた予算のなかで必要な医薬品を効率的に国民に供給する医療技術評価(HTA)のシステムを本格的に実施した(※1)。
新薬に既存薬と比較しての付加価値を求めており、2012年9月のスクリップ誌は、新制度で50%の新薬が既存薬への目立った優位を示せなかったと報道している(※2)。

これに対し製薬企業はさまざまな要求を政府に行っているが、スクリップ誌2013年8月30日号が、「ドイツのAMNOGシステムには『バイアス(ゆがみ)をもった』患者と医師ははいる余地がない」とのタイトルで最近の状況を伝えているので紹介する。

以下は記事の要旨である。
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AMNOGのシステムは、新薬を既存の比較薬に対して明らかな付加価値があるかどうかで評価する。もし付加価値がなければ、新薬には、既存の比較薬と同じ価格しか与えられない。
このシステムは論議を呼び、いくつかの企業は新薬をドイツで販売しないことを決定した。ごく最近には、ノボノルディスク社が、糖尿病治療薬 Tresiba (insulin degludec) をドイツで販売しないことを決めた。

このAMNOGシステムについて、ドイツ血液学・腫瘍学学会は、2013年8月21日、がん患者と医師がより強い役割を果たせるよう要請した。
同学会は「価格コントロールが必要なことは認める。しかし、ヘルスケアシステムの中心にいる患者と臨床医は限られた権利しかもたない観客ではない」「指定される比較薬を何にするかに口出しできるべきだ、またエンドポイント(評価指標)の設定についても同様だ」と述べている。

この要請に対し、AMNOGプロセスを担うG-BA(連邦合同委員会: 保険償還の可否について決定し保健省にその承認を求める役割の組織)の長である Josef Hecken 氏は、「患者団体と学会は、新薬の価格と保険償還について決定するAMNOGシステムで、専門的意見を生かして現在より大きい何らかの役割を果たすには、必ずしも十分に公正でない」「患者団体と学会は企業からしばしば資金を得ており十分な独立性を有しない」と述べ、同システムにがん患者と医師が入る余地はないという立場を示した。

 また、G-BAの患者代表医薬品小委員会のスポークスパースンであるUlrike Faber氏 は、「ベネフィット評価の初期のあらゆるステージに患者代表は常に参加しており、患者の関心と考え方は決定と結果に十分に考慮されている」「適切な比較薬治療の選択のために選んだ方法は、ガイドラインと完全に公表されるエビデンス(科学的証拠)を考慮に入れたものであり、すべてがヒアリングの場面で包括的に討議されている」と述べた。

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 日本でも最近やっと医療技術評価(HTA)の導入が中央社会保険医療協議会で論議されるようになってきたが、慎重論が跡をたたずなかなか前に進まない。
 一方、既存剤と比較して目立った特徴がなく高価な降圧剤ARB(アンジオテンシン脅容体拮抗剤)が出来高払いと新薬シフトのもとで使用が急増し、保険財政を圧迫するといった事態が繰り返されている。
 プラセボ(偽薬)と比較して有意差があれば有効性があるとして販売承認される状況の中で、保険償還において既存の比較薬に対して新薬に明らかな付加価値を求めるドイツなどの動きが注目される。

 日本においても製造販売承認されれば同時に薬価基準収載が決まるというシステムでなく、ドイツなど欧州諸国のように、販売承認と医療技術評価(HTA)に基づく保険償還と、2度にわたる異なった観点での評価を考慮していく必要があるのでないだろうか。 (T)