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オーストラリアの学会誌が製薬企業広告を載せないことを表明

2011-05-20

(キーワード:医学雑誌、利益相反、広告収入、オーストラリア救急医学会)

 利益相反の問題は継続して本欄に取り上げてきており、その切り口としては医師、研究者、学会等の利益相反、臨床試験の資金源、患者会と製薬企業の経済的関係などが上げられるが、今回とりあげるのは医学雑誌の利益相反である。
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 EMA(オーストラリア救急医学)誌は2011年2月の論説(※1)で今後製薬企業の広告を載せないことを宣言した。これは、2010年11月にキャンベラで行われた同誌の論説会議で満場一致で支持された動議に基づいている。論説会議では医学における製薬会社の有害な影響について継続して議論してきており、製薬会社がスポンサーとなった臨床試験の問題やゴーストライターの問題、製薬会社の研究者への圧力などの問題を指摘している。また、医学雑誌の広告については、広告料1ドルが2〜5ドルの収益を生むなど製薬会社にとって非常に効果的であるとしている。 しかし、この問題は医学雑誌側にも責任があり、NIJM誌(The New England Journal of Medicine)など有名医学雑誌は強烈に製薬企業の広告を勧誘しており、いくつかの大きな医学雑誌は、心血管分野やがん分野などの指導的立場にいる医師に対する影響力を宣伝しさえしていると指摘している。
 EMA誌は、オーストラリア救急医学会とオーストラリア・アジア救急医学会の学会誌である。同誌は他のオーストラリアの医学雑誌にも続くよう呼びかけている。同誌が口火を切ったことについては、救急医療という専門分野であり、心血管分野やがん分野と違い治療薬の処方期間が短いため、製薬企業の標的となっていず、実行しやすい立場にあることをあげている。
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 医学雑誌の利益相反問題は2011年2月にも取り上げている(※2)。製薬企業の広告は主要な目的が、特定の製品を選択するように促すことであり、本来の医学雑誌の任務とは根本的に利益相反がある。  (GM)