注目情報

  1. ホーム
  2. 注目情報

医学雑誌は投稿者に求めている利益相反の情報公開と同じ原則を自分たちにも適用すべき

2011-02-04

(キーワード:利益相反、医学雑誌、インパクトファクター)

 医学雑誌において投稿論文の著者が利益相反の情報開示を行うことはもはや常識であり、ICMJE(国際医学雑誌編集者委員会)は利益相反開示の様式を統一するなど利益相反マネージメントを強化している。(※1)一方、医学雑誌そのものも製薬産業から強く影響を受けており、医学雑誌は製薬企業のマーケッティング部門の延長であるとの批判もある。(※2)以下はプロス・メディスン2010年10月号掲載の論文「医学雑誌における利益相反:企業がスポンサーとなったランダム化臨床試験が医学雑誌のインパクトファクターと収入に及ぼす影響」(※3)の要約である。著者たちは、北欧コクランセンターとコペンハーゲン大学の研究所に所属している。
----------------------------------------------------------------
 著者たちは、6つの代表的な医学雑誌( Annals,Archives, BMJ, JAMA, Lancet, NEJM)において、1996-7年および2005-6年に掲載されたランダム化比較臨床試験(RCT)について検討して次の結果を得ている。
 製薬企業が資金提供したRCTの割合は、Annalsは19%、Archivesは15%、BMJは7%、JAMAは26%、Lancetは22%、NEJMは32%と医学雑誌によってばらつきが大きかった。(2005-6年)。製薬企業が資金提供したRCTは、他の資金によるRCTよりも引用される頻度が高く、製薬企業が資金を提供したRCTを除外するとすべての医学雑誌で引用回数から計算されたインパクトファクター(論文が引用されている頻度に基づく医学雑誌の重要性の指標)の低下がみられた。例えば、2007年について、製薬企業が資金を提供したRCTを計算から除くと、インパクトファクターはAnnalsとArchivesは4%、BMJは1%、 JAMAは5%、Lancetは6%低下し、NEJMは15%低下した。著者たちは医学雑誌の編集者たちに、製薬企業からの収入について質問した。返答があったのはBMJとLancetの2誌だけであったが、2005-6年の全収入に対する増刷販売収入の割合は、BMJが3%、Lancetは41%であった。製薬産業の資金で行われた臨床試験の出版は医学雑誌のインパクトファクターの増加と関連しており、増刷販売は医学雑誌にかなりの収入を提供しているかもしれない。我々は、論文の潜在的影響を評価することができるように、医学雑誌が投稿論文の著者に要求すると同じ方法で医学雑誌の財務情報を明らかにすることを提案する。これらの結果から編集者たちの判断や決定が企業との金銭的関係で影響を受けているとまでは言えないものの、医学雑誌は投稿論文の著者に求めている利益相反の情報公開と同じ原則を自分たちにも課すべきである。
----------------------------------------------------------------

 医療現場では JAMA, Lancet, NEJM等の有名雑誌の増刷版をよく目にする。これは、医療者が製薬会社に依頼して取り寄せた文献も含まれるが、多くは製薬会社のMRが自社の薬剤に関する論文が有名雑誌に掲載されたという事実を医療者に知ってもらい販売拡大につなげたいために置いていったものである場合も多い。たとえ論文の内容を十分読まなくても、有名雑誌に掲載されたという事実だけで薬の価値が高いと錯覚させてしまうからである。しかも、有名雑誌にのった論文といえどもspin(※4)が含まれていないとはかぎらないのである。 (GM)