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米国の代表的医科大学の多くが、ゴーストライティングに関するルールを持っていない

2010-04-15

(キーワード:ゴーストライティング、EBM、研究倫理)

 英国医学雑誌電子版2010年2月8日号(※1)は、米国のトップ50医科大学のうち、わずか13校しか、科学論文のゴーストライティングに関するルールを持っていないという、テーン氏らの調査報告を紹介している。以下はその要約である。
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 テーン氏らは、多年にわたり大学の評価を行っているUSニュース&ワールドレポート誌“2009ランキング”で、受け取った研究資金概算のトップ50校について、そのウェブサイトに、ゴーストライティングに関する方針が掲載されているかを探した。米国の131校の医科大学のうち、10校が明白にゴーストライティングについて禁じ(ただしゴーストライティングについての明確な定義はない)、3校はゴーストライティングを禁じる実質的な著作者の判断基準を持っていた、と報告している。
 昨年、国立科学アカデミー医学研究所(IOM)は、医科大学に対し、教員によるゴーストライティングを禁じるよう勧告した。テーン氏らは、ゴーストライティングの問題性を次のように述べている。明らかにデータの歪められた論文であるというだけでなく、商業的意図で書かれた大学・研究機関名入りの「医学論文」の抜き刷りは、臨床医には、宣伝物ではなく科学的研究だと思い込まされる。そして、実際には書いていない論文の著者として自分の名前を連ねたり、あるいは故意に読者を誤解させるよう企業の共著者の関与を隠すことを了承するなどというのは、医学界以外どこにもないということに、我々は気づくべきだと警告している。 
 ゴーストライターとは、「ある出版著作物の主要な貢献者であるが著者としては名を連ねない何者か」と定義される。論文作成の主要な貢献者であるすべての個人は「著者」であり、正確に著者を報告することは研究の倫理性を保つ上で不可欠である。医科大学が2010-2011学年度から「出版物に名を連ねるすべての著者は、医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)による著作者基準(註)を満たさなければならない」というルールを採用するよう、テーン氏らは提案している。

註)ICMJEによる生物医学誌における著作者に関する基準による「3つの条件」※2)
1) 構想、計画、データの取得または解析・解釈の主たる貢献者
2) 論文の起草または重要な知見に対する重大な修正を行っている
3) 出版される最終原稿の最終的な承認者

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 ゴーストライティングについては、注目情報でもたびたび取り上げてきた。海外では医学雑誌の編集者らが、ゴーストライティングの存在を厳しく批判し、規制する対策を提案してきている。本報告の共著者の一人は、「今までに誰ひとりとしてゴーストライティングに手を貸したことで制裁を受けた者がいない、ということは、EBM(証拠に基づく医療)における最も緊急の問題である。」とBMJ誌に語ったとされる。日本国内でのゴーストライティングの実態を明らかにするとともに、著名な教授・研究者が実際には書いていない論文に安易に名を連ねることへの反省を求めていく必要があろう。(N)