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PLOS Medicine 編集者たちがゴーストライティングと闘う論説

2009-12-28

(キーワード: ゴーストライティング、医学雑誌編集者、製薬企業とメディカルライティング企業)

 ゴーストライティングを絶滅させるために、厳しく対処する姿勢を医学雑誌編集者が表明した論説である。Pros Medicine誌2009年9月号の論説「ゴーストライティング: 今拡大しつつある医学出版の汚れた小さな秘密」(※1)の要旨を紹介する。
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 (乳がんなどの副作用被害にあった)女性たちがホルモン補充療法剤であるPrempro(日本製品なし)の製造者であるワイス社を提訴した裁判が進行中だが、Pros Medicine誌もこれに訴訟参加した。この裁判の中でワイス社が専門のメディカルライターに書かせた論文に、著名な研究者が名ばかりの「著者」になるというゴーストライティングが大規模に行われていたことが、それらを裏付ける証拠書類で明らかになった。
 ゴーストライティングは医学出版の「汚れた小さな秘密」として有効な対策がされないままに長く存在してきたが、今やビジネスとして大規模に行われるようになってきている。製薬企業と医学教育コミュニケーション企業が、大規模で高収益のゴーストライティング産業を作り出している。今や製薬企業がマーケッティング・キャンペーンに費やす支出の中心は、はっきりとした広告に対してではなく、一見まともな学術総説論文、原著研究論文、それに臨床試験報告の形をとって提供される「エビデンス」に対して投じられるようになっている。
 われわれにできることは何なのか。われわれは今までそれらのものを早く出版するということに注力してきたが、これからはそれらのものを徹底して調べ、ゴーストライティングを絶滅するよう注力せねばならない。
 ここ数年、いくつかの学術雑誌や編集者組織、それに何人かのメディカルライターたちが、著者たちに論文作成に果たした役割をそれぞれ明記させたり、論文作成にかかわった全員の名前を明らかにさせたり、利益相反を詳細に明記させたり、ゴーストライティングに対する「消耗戦」を行っている。医学誌編集者国際委員会(ICMJE)のような編集者組織は、生物医学出版におけるオーサーシップ(原作者が誰かということ)の基準を明白に定義している。世界医学誌編集者協会(WAME)は営利会社によってはじめられたゴーストライティングに対する独自の政策を発展させてきた。しかし、さらに厳しい対処が求められている。
 学術雑誌にとってゴーストライティングはどういう意味を持っているか。ゴーストライティングに関わりをもつことは、出版倫理の制裁に値する重大な違反である。もちろん予防が鍵である。可能な手立てとしては、述べられた製品についてその会社の関与の明示を求めることや、違反が明らかになった後の掲載禁止や所属施設への通報などの制裁を行うことなどがある。
 今こそゴーストライティングと厳しく闘うときである。行動なしにはゴーストライティングは続くだろう。
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 今回はゴーストライティングに厳しく対処する姿勢を表明した医学雑誌編集者による論説を紹介した。最近何回かの注目情報で取り上げたように(※2-※4)、ゴーストライティングの問題が脚光を浴びている。日本でもゴーストライティグ問題への取り組みの強化が求められている。 (T)