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ニッセン氏によるFDA改革に向けた提言「秘密主義の終わりがFDAを蘇らせる」

2009-04-21

[キーワード: オバマ大統領、FDA、臨床試験、情報公開、医薬品承認]

 2009年1月20日バラク・オバマ第44代アメリカ大統領が誕生した。これに先立ち、Nature誌は1月15日号に各界の指導的人物6人によるオバマ新政権への提言を掲載した。その一つが米国クリーブランド・クリニックのニッセン医師による「秘密主義の終わりがFDAを蘇らせる」である。ニッセン氏はFDAへの厳しい批判者として知られるが、次期FDA長官候補の一人に名を連ねていた人でもある。同誌のニッセン氏による提言の主旨には次のような内容が含まれている。
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: 1) FDA長官の任期を6年にし、4年毎に変わる大統領制から独立させるべきである; 2) 臨床試験登録データを公開し、医薬品の有効性と安全性に関する情報へのアクセス性を高めるべきである; 3) 医薬品による有害事象の情報収集を自発報告に頼るだけでなく、前向きに情報収集し評価するシステムを強化すべきである; 4) 新薬承認には(プラセボ対照試験よりも)実薬対照試験を求めるべきである; 5) 新薬承認において非劣性試験の採用が増加しているが、結果的に十分な効果を望めない新薬が承認される可能性につながるので見直すべきである; 6) 新薬承認では代理の指標ではなく、より患者の利益につながるアウトカムを評価すべきである; 7) 企業による広告・宣伝に対するFDAの規制権限を強化し、DTC(企業から患者への直接的な宣伝・広告)を制限すべきである。
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 以前、当会議機関誌28号(2007年12月1日)では、イタリア マリオ・ネグリ薬理学研究所長シルビオ・ガラティーニ教授の講演「臨床試験は本当に患者の利益に役立っているか?」(於: 2007年10月21日、日本薬剤疫学会)をご紹介したが、そのときのガラティーニ教授による指摘でも、臨床試験におけるプラセボ対照の過剰使用、非劣性試験の多用などが世界的な問題として取り上げられていた。今回ご紹介するニッセン氏の指摘はFDAと米国政府に対するものであるが、ガラティーニ教授による問題提起とも合わせて、今日の日本における医薬品開発と承認システムへの警鐘としてとらえるべきだろう。
 薬害オンブズパースン会議も「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」に対する意見書で同趣旨の提案をしている。    (Y)