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医師への製薬企業のもてなし 米国2州で情報公開を求めた結果は

2007-12-12

(キーワード: 製薬企業の医師もてなし情報公開、米国バーモント州、ミネソタ州、情報公開法、利益相反管理)

 米国で、製薬企業からもてなしの支払いを受ける医師に起こりうる利益相反、すなわち医師処方ひいては医療費への影響について対処するため、連邦レベルで製薬企業の販売促進(プロモーション)活動をオンライン登録し、情報公開しようという動きが盛り上がりをみせている(※1)。2007年9月、超党派有力議員による「医師支払いサンシャイン法」が上院に提出された(※2)。
 今回は、すでに制定された同じ目的の州法では、どの程度のことがわかるのか、先進の2州、バーモント州とミネソタ州において、実際に情報公開法で開示を求めた結果が報告されたJAMA誌の論文(297,1216,2007)を紹介する。
 この開示結果は、医師処方や医療費に大きな影響を与えうる製薬企業の販売促進(プロモーション)活動についての基本的な情報開示に関し、先進的な州においてさえ壁が厚く、これらについて患者の理解を助けるデータがいかに不十分かを明らかにしている。
 また、トレード・シークレット(企業秘密)保護が現実に情報開示の大きな妨げになっていることが示されており、このことは医師への支払いの開示だけでなく、患者・市民の安全を守るための医薬品の安全性データの開示の妨げとなっていることと共通点があり、今後取り組むべき課題を示している。
 以下は論文の要旨である。
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 いくつかの州政府が、医師への支払いのモニター(監視)に積極的な役割を果たしている。現在5つの州とコロンビア特別区が支払いの情報公開を強制する法律を有している。ミネソタの法律が最も古く1993年に制定されており、カリフォルニア、マイン、バーモント、西バージニアの各州とコロンビア特別区は、2001-2005年の制定である。2006年には、さらに11の州が同様の法律を提案している。
 これらのうち、支払いについての市民への情報公開がより進んでいるバーモント州とミネソタ州の2州で、情報公開を命じる法律が十分なものであるかを、支払い調書の情報開示を求め評価した。また、支払いがどの程度のものであるかを検討した。
 バーモント州では2002年7月1日から2004年6月30日までの期間の、ミネソタ州では2002年1月1日から2004年12月31日までの期間の、医師に対する100ドル(約12000円)以上の支払いについて明らかにする目標を定めた。
 やってみるとバーモント州では検事総長との折衝に時間をとられ、ミネソタ州では州薬局連合団体でのコピー作業に時間をとられた。バーモント州では、支払いの61%が製薬企業の機密事項(トレード・シークレット)として開示されず、開示された支払いの75%が受領者について「医師」としか書かれていないなどで、医師を特定できなかった。ミネソタ州では、情報開示した企業の4分の1しか3年間の完全なデータを公開していなかった。バーモント州での支払いの中央値は177ドル(約21000円)、ミネソタ州は1000ドル(約12万円)であった。医師を特定して分析できたのはミネソタ州だけであった。
 このように、相対的により進んでいるバーモント州とミネソタ州においても製薬企業の医師への支払いにアクセスするのは容易でなく、またデータが得られても非常に限定されたものであった。しかし、100ドル(約12000円)またはそれ以上の支払いが製薬企業から医師に多数なされていることは確かであった。  (T)