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製薬企業から医師への支払いを情報公開する米国合衆国法の制定をー上院公聴会でのパブリック・シティズンの証言

2007-08-29

(製薬企業から医師への支払い、情報公開、米国合衆国法、パブリック・シティズン、上院公聴会証言)

 製薬企業は、医師が患者に対する処方に自社製品を用いてくれることを期待して、販売促進費からさまざまな名目で医師に対する支払いを行っている。それらは結局は医薬品の価格として公共の医療費支出に跳ね返ってくるが、その実態の把握は難しい。米国では、すでにいくつかの州がその情報公開を求める法律を制定しており、上院高齢者問題特別委員会が合衆国全体のシステムを整備しようと活発に動いている。2007年6月27日、上院高齢者問題特別委員会がこれについての公聴会を開催した際、米国の医薬品監視団体パブリック・シティズンが、マウント・サイナイ医科大学インストラクターとの連名で行った証言(※1)の要旨を紹介する。
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 医師に対する製薬企業の支払いの情報公開を求める合衆国法の問題について、上院特別委員会で証言する機会を与えられたことに感謝する。この目的の法律制定はすでに州レベルでは勢いを増している。ミネソタ州が1993年最初に法律を制定し、2001年以降3つの州とコロンビア特別区が同様の法律を制定した。2006年には11の州が情報公開法を提案したが、われわれの知るところではまだ法律とはなっていない。

 製薬企業は、販売促進(プロモーション)活動に、2003年に253億ドル(約3兆1千万円)の費用をかけている。合衆国法の制定は、国民がその支払い内容をモニターするのに、重要なメカニズムを提供する。製薬企業の医師を対象にした販売促進費は、無料のサンプル、販売促進の情報提供活動、継続した医学教育活動などに支出され、医師の処方行動に変化をもたらすことが示されてきた。医師たちは、同僚は影響を受けるかもしれないと認めながら、自分自身は影響を受けないと決まって主張してきた。しかし、何の見返りもないのなら、製薬企業は食事や旅行を提供したりはしない。エビデンス(科学的証拠)は、見返りを期待した製薬企業の判断が正しいことを強く示唆している。製薬企業との間に形成された利益相反が、科学に打ち勝って処方内容に影響する。その結果、それらの不必要な医薬品の使用や高価な新薬が医療費支出を増加させるとともに、新たな副作用の危険をもたらすのである。また、これもその重要性では劣らないが、患者・市民の医療専門職への信頼を損なうことにつながっている。

 2002年、米国最大の内科医団体である米国内科医会は、製薬企業の医師に対する支払いに関する対応策についてのステートメント(声明書)を発表した。そこでは、支払いが適切なものかを判断する第1の基準として「これについて自分の患者はどう考えるか? 多くの患者・市民はどう考えるか? 製薬企業との関係がマスコミで報道されたとき自分がどう感じるか?」をあげている。支払いに関する情報公開法は、発効すればこれらの架空の質問が実際にはどうなるかを、現実として問うものとなる。

 5つの州法のなかでは、ミネソタ州が唯一医師の特定を可能としているが、それでも実際にアクセスできるデータは限られている。製薬企業の医師への支払いの問題は、国民全体に関係する課題であり、合衆国全域で支払いのオンライン登録を義務付け、完全なアクセスを可能とする「合衆国法の制定」が必要である。 (T)