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米国FDAが新たな一般臨床患者へのイレッサ使用を禁止

2005-07-29

 (キーワード: イレッサ、FDA、新たな一般臨床患者への使用禁止、イレッサ・アクセ  ス・プログラム)
 
 米国FDA(医薬食品局)は、延命効果が確認されなかった肺がん治療剤「イレッサ」(一般名:ゲフィチニブ)を一般臨床で新患者に使用することを禁止し、新規患者への使用はIND申請適用臨床試験(後述)への参加を前提にすること、一般臨床でのイレッサの使用は現在イレッサで利益が得られている患者、過去にイレッサで利益が得られた患者に限定するという、使用規制を内容とする添付文書の改定を行うと、6月17日発表した(※1)。

 FDAはまた、改定内容を確実に実行するため、アストラゼネカ社との間で、9月15日から投与患者を登録する「イレッサ・アクセス・プログラム」をスタートさせることで合意したと、併せて発表した。なお、米国では研究用新薬(Investigational New Drug、IND)についてのIND申請制度(FDAにIND申請書を資料を添えて提出し、30日間待ってFDAから連絡がなければ臨床試験を開始できるという制度)があるが、2005年6月17日以前に施設審査委員会(IRB)によって承認されたこのIND申請に該当しない臨床試験(non-IND clinical
trials)の対象患者にも、この「イレッサ・アクセス・プログラム」が適用される。それ以外の新たな患者は、施設審査委員会が認めた臨床試験の対象となる場合でも、それが
IND申請適用の臨床試験でないとイレッサの投与を受けることができない(※1)。

 アストラゼネカによれば、米国では現在約4000名の患者がイレッサの投与を受けており、これらの患者が「イレッサ・アクセス・プログラム」の対象として想定されている(※2)。「イレッサ・アクセス・プログラム」で用いられる患者への説明文や同意書、医師の証明書などがアストラゼネカのウエブサイトで公表されているが(※3)、患者はイレッサが4つの比較臨床試験で生存期間延長が示されなかったこと、生存期間延長が示された代替薬が存在すること、アクセス・プログラムに参加した後でもいつでもイレッサの服用を止められることなどの説明を受けた後、同意書に署名する。患者の同意書、医師の証明書は医師により単一受付先であるプライオリティ・ヘルスケア薬局に郵送され、同薬局からイレッサが供給される。

 イレッサは、延命効果が得られなかったことを受けて、すでにアストラゼネカによってEUでの販売承認申請が取り下げられている。今回の米国FDAの厳しい使用規制は、4つの比較臨床試験で延命効果が得られなかったことが判明した後も、日本では新たな使用規制がされていないのとは、対照的である。
                             (T)