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製薬企業との臨床試験契約に関する米国医科大学の基準

2005-07-29

 (キーワード: 製薬企業との臨床試験契約、医科大学での基準、米国)

 日本における製薬企業の研究機関への研究委託契約、医療機関への臨床試験委託契約には、「製薬企業の同意なしに結果を公表できない」という公表制限特約がほぼ例外なくついている。肺がん治療剤イレッサでは、東京女子医大の動物実験データでイレッサが傷ついた肺の回復を妨げるという、臨床での間質性肺炎・急性肺障害の重篤な有害副作用につながる結果が得られていたが、米国胸部学会で発表しようとしたところ、アストラゼネカに拒絶され、断念したと伝えられている。試験委託契約でのこれらの制限条項については、日本では残念ながら殆ど論議されていない。しかし米国では論議が進んでおり、米国での現状を伝え、問題解決の方向を提言したNEJM誌2005年5月25日号の掲題の論文を紹介する。

 
  米国では、医薬品臨床試験の資金の約70%を製薬企業が拠出しているが、
  企業と大学研究者との法的な取り決めについては殆ど知られていない。
  著者たちは、企業との臨床試験契約の交渉に責任をもつ医科大学の研究
  管理者に対し、調査を郵送で実施し、契約条項に関する各施設の基準(
  Institutional Standards)を調べた。

  調査票を郵送した122施設のうち、107施設から回答が得られた。公表に
  関するいくつかの契約条項については、医科大学回答者に広範な意見の一
  致が存在した。例えば、85%以上の回答者が企業が原稿を修正する権限や
  公表するかしないかを決定する権限を認めないと回答した。一方、意見が
  分かれたのは、企業が原稿に独自の統計解析を加えること、企業が原稿を
  作成すること、試験終了後に研究者が第3者にデータを提供することを禁じ
  ること、などの条項を認めるかどうかであった。契約締結後の争いは日常
  的で、その多くは支払い、知的所有権、データの管理、データへのアクセ
  スに関するものであった。

  このように、企業との臨床試験契約において制限条項として何を認めるか
  の基準は、医科大学の間でかなり異なっていた。著者たちは、これらの問
  題に各医科大学が個々に対処するのではなく、適切な共通基準の確立のた
  めに、企業との法的な関係についてより多くの情報共有を進めていくよう
  提言している。
                           (T)

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