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英国医薬品庁(MHRA)の改革が進展

2005-05-31

英国医薬品庁(MHRA)の改革が進展
 (キーワード: 英国医薬品庁(MHRA)、機構改革、一般市民の参加、利害の衝突の減少、 より良い意思決定)

 英国医薬品庁(MHRA)の改革が進展しています。英国医師会発行のBMJ誌2005年4月23日号(330、917)に、Joe Collier氏(セント・ジョージ大学医療政策教授、独立医薬品情報誌DTB誌前編集長)が、「医薬品庁(MHRA)が新たな編成を提案ー一般市民の参加、利害の衝突の減少、より良い意思決定」を執筆しています。以下はその概略です。

   英国医薬品庁(MHRA)に大きな変化が生じており、よい方向に向かって
   いる。4月5日、英国下院の保健特別委員会が、製薬企業の影響について
   の報告書をまとめ、英国医薬品庁は認可官庁としての能力を欠き自己満
   足に陥っていると批判し、医薬品庁が独立の審査を受ける必要があると
   した。

   4月7日、政府は議会に対し、1970年代以来、大きな変更のなかった2つの
   中心的な諮問機関、医薬品委員会(Medicine's Commission)と医薬品安全
   性委員会(CSM)を廃止する手始めとなる医薬品諮問機関規制を提示した。

   4月13日、政府は新たなシステムの構成員の充実のために、経験のある専
   門家と患者および消費者の代表を招聘すると発表した。これらは、2003
   年に国立監査庁が医薬品庁を対象とした重要な報告書を発表し、今年に
   入ってからは、1月31日に医薬品庁に対するコミュニケーション・ディレ
   クターが任命され、イェローカード(有害事象報告書)データの情報公開が
   促進され、医薬品庁が保健特別委員会に対して認可を与える意思決定の根
   拠を公開する約束をするなどの、関連する一連の動きにつながるものであ
   る。

   これまでその機能を果たしてきたとはとても言えない医薬品委員会
   (Medicine's Commission)と、医薬品安全性委員会(CSM)とが、ヒト医薬品
   委員会(CHM)に統合される。このあらたな委員会は、ヒトに用いる医薬品
   のみを対象とし、4つの機能を果たす。

   1.大臣に対して、一般的な認可の方針および個々の医薬品認可に関する助
    言を行う。
   2.医薬品の安全性問題についての全般的な責任を負う。
   3.医薬品庁を支える他の職能機関の構成員の任命に対する助言を行う。
   4.承認申請が却下された製薬企業からの訴えを最初に聞く役割を負う。

   ヒト医薬品委員会(CHM)は、医療を専門とする者を座長として一般市民代
   表2人を含む19人の構成員から成り立つ。残りの構成員は、医療全般、小児
   科医、臨床薬理、分析化学、生物科学、生薬学のような領域からの経験の
   ある専門家である。これらすべての構成員とその緊密な関係にある家族は、
   製薬企業の株券の所有や製薬企業から収入を得るなどの個人的な利害をも
   つことを禁止される。 

   新委員会は、3つの常置委員会とまわりの15の専門家諮問グループから助言
   を受ける。各専門家諮問グループには少なくとも2人の一般市民代表が入る。
   専門家諮問グループの仕事は、承認申請を吟味し、最後にヒト医薬品委員会
   (CHM)に対し、認可が与えられるべきかどうかを助言することである。

   医薬品庁はまた、3つの法定委員会と植物製剤に関する新たな諮問委員会を
   有している。ヒト医薬品委員会(CHM)と同様にこれらも大臣に直接助言す
   る。

   常設委員会と専門家諮問グループの座長もまた、製薬企業と個人的な利害
   関係をもつことを許されない。他は利害関係をもつことは禁じられないが、
   そのことを開示しなければならない。また場合によっては議論に参加するこ
   とを禁じられる。

   われわれは、一般市民が参加すること、高位の意思決定機関から利害の衝突
   を排除すること、専門的な部分と政策的な部分を分けてそれぞれ専門的な判
   断を下すこと、評価の方法が各申請に対しそれぞれ設置される諮問グループ
   により行われるために固定化しないこと、訴えの迅速な処理がおこなわれる
   こと、などを歓迎すべきだ。

   しかし、若干の用心は必要だ。これまでのやり方が変わる中で、認可過程を
   通じての標準が変わるリスクが存在している。これを避けるために、関係者
   の綿密な訓練と意思決定に対する質的なチェックが必要となるだろう。新た
   な過程の3年をかけての独立した再検討は、時間をかける価値のあるものとな
   るだろう。これらの安全装置は、時間、資金、さらにはこれまでの規制当局
   にはあまり日常的でなかった正直な自己批判のための用意ができていること
   を要求するだろう。

 なお、この記事の最後には著者の競合する利害関係の申告として、次のことがあげられています。

   Joe Collierは英国の医薬品委員会の構成員である。また医薬品安全性委員会
   の小児医薬品ワーキンググループの構成員でもある。彼は、製薬企業の影響
   についての調査において、下院の保健特別委員会の専門家アドバイザーであ
   った。
                                 (T)

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