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英国NHS(国民医療サービス)が製薬企業との密接な関係を議会から批判される

2005-04-28

英国NHS(国民医療サービス)が製薬企業との密接な関係を議会から批判される
  (キーワード:  英国NHS、製薬企業との密接な関係、議会の批判)

英国下院の保健特別委員会は、「製薬企業の影響」と題する報告書をこのほどまとめました。126ページの分厚い報告書です(※1)。報告書は、製薬企業の影響で不必要な投薬や過剰投薬、安全性問題が日常化していることを厳しく批判し、とりわけ製薬企業を規制すべき保健省やMHRA(医薬品規制庁)が国民の利益と製薬企業の利益を両立させるのは困難であるとして、製薬企業育成の役割を分離し通商産業省に移すことを提案しています。この報告書について、英国医師会発行のBMJ誌2005年4月9日号(330,805)が「NHS(国民医療サービス)が製薬企業に対する手ぬるい法的規制で批判される」の記事を掲載しています。以下はその概略です。

   製薬企業と英国保健省とのきずなが非常に密接になった結果、一般市
   民の健康が危険にさらされていると、今週出版された下院議員の超党
   派の報告書が、非常に厳しく批判している。待ち望まれた報告書は、
   英国の医薬品規制官庁が新薬の承認を求める製薬企業からのデータを
   よく吟味せず、また有害副作用を適切に監視しなかったと、指摘して
   いる。

   報告書はまた、保健省の手ぬるい法的規制が、製薬企業が市民や医療
   専門家への影響を拡大しようとするのを容認し、医師による過剰投薬
   や一般市民の医薬品への無分別な信頼をもたらしたと、非難している。

   下院の保健特別委員会からの報告書は、保健省に全般にわたってやり
   方を変えるよう推奨している。とりわけ批判はMHRA(医薬品規制庁)に
   向けられており、MHRAは独立した再吟味の課題とするべきと述べてい
   る。報告書は、製薬企業の販売促進のための材料、とりわけ発売して
   から最初の6か月のものに対するより厳しい法的規制が必要であると
   述べている。また、製薬企業が規制に違反したり、誤って導く研究を
   出版したときは、製薬企業の活動を制限すべきだと述べている。

   MHRAは、製薬企業がどのような研究をすべきかを指導し、そのデータ
   を任意に監査し、結果を発表するのに、より大きな権限を与えられる
   べきだ。市販後の医薬品をもっと綿密に監視したり、どの医薬品を市
   販5年後に承認を更新するかを検討するのに、より多くのスタッフが
   必要であると、報告書は述べている。

   保健大臣は同時に2つの主人に仕えることはできない。保健省は患者と
   公衆衛生の利益を製薬企業の利益に優先させることが不可能であるよ
   うに見える。それゆえわれわれは、製薬企業の育成は保健省から分離
   し通商産業省に移すことを推奨すると、報告書は述べている。

   英国製薬協は、報告書の一部の観点を歓迎しているが、他には異議を
   唱えている。会長のリチャード・バーカー氏は、「委員会の報告書は、
   ヘルスケアについての決定に関係する事項で、公的な説明責任と透明
   性を増加させる多くの建設的な提案を行っている」と語った。しかし
   製薬協は、医師の処方権を制限し、企業が医療専門家に情報を提供す
   る法的資格を制限しようとする推奨に疑問を呈した。報告書は「医薬
   品消費は巨大化し増大している」として、販売後数か月の処方制限を
   主張しているが、これは見当違いだと、製薬協は語った。製薬協によ
   れば、英国の一人当たりの医薬品消費は欧州で最も少なく、市販後最
   初の5年間の新薬の使用は最も低い。

   英国消費者協会ホイッチ(“Which?”)は、報告書を歓迎した。しかし、
   同協会発行の医薬情報誌DTB誌の編集長アイク・イヒアナチョー氏は、
   処方せん薬からOTC薬に分類を変えることについての手引きがないこと
   が大きな欠点と見なした。氏は、シンバスタチンのスイッチOTCに疑問
   を呈している。

  「もし政府が一般市民の健康に本当に関心があるなら、単純に再分類を進
   めるのではなく、目標母集団に安全で有効なことが証明されたもののみ
   をOTC薬にすべきだ」と、彼は語った。

                          (T)