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英国政府の新型コロナウイルス感染症対策に助言するメンバーの利益相反が十分に開示されていない

2021-06-01

(キーワード):利益相反、Covid-19、Covid-19ワクチン、諮問委員会

 英国政府の新型コロナウイルス感染症対策に強い影響力を持つ非常時科学諮問委員会『SAGE)』(Scientific Advisory Group for Emergencies)やワクチンと検査などについて助言を行う『ワクチンタスクフォース』の利益相反の開示について、英国政府が消極的であることに対し、BMJ誌(英国医学雑誌)はフリージャーナリストのPaul D Thacker氏の記事を掲載して批判している。以下要旨を紹介する(※1)。

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 SAGEの秘密主義に対しては、2000年3月のNature誌をはじめとして批判が続けられた。英国政府は、2000年夏に、SAGEメンバーの氏名、議事録、政策文書を発表し始めたものの、SAGE メンバーが署名した金銭的利益相反フォームについては公開しなかった。。BMJ誌は、現在も情報公開請求を通じて、『SAGE』および『ワクチンタスクフォース』のメンバーの財務開示フォームのコピーを求めている。

 2020年4月、英国政府は、新型コロナウイルスワクチンを製造するための研究を促進するため、政府の最高科学顧問であるPatrick Vallance氏が新ワクチンタスクフォースを率いると発表し、生命科学ベンチャー企業のマネージメントパートナーであった保守党大臣の妻がその職を一時的に辞めて新ワクチンタスクフォースの議長に就任することとなった。また、そのメンバーには、ワクチン製造メーカーであるアストラゼネカ社、そして全国コロナ感染症検査諮問委員会を率い政府の新検査承認グループの議長を務めたJohn Bell氏(オクスフォード大学)が含まれていた。

 英国政府は、同年7月までに、コロナウイルスワクチンに関するグラクソスミスクライン社との契約に署名し、6000万回分のワクチンを確保した。ところが、同年9月、そのグラクソスミスクライン社株式をVallance氏が60万ポンド(約8820万円)相当所持していることが報じられた。

 また、その数日後、1350万ポンドの抗体検査薬を英国政府に売却したロシュ社から、Bell氏が77万3千ポンド(約1億1360万円)に相当する金銭的利害関係を持っていたことが報じられた。これについてBell氏は、自分は抗体検査の売却に関与しておらず、しかも英国政府に「長文の利益相反リスト」を送ったと弁解した。この点について、BMJ誌は、ワクチンタスクフォースを発表した『ビジネス・エネルギー・産業戦略省』(BEIS)に対して、Bell 氏が本当に「長文の利益相反リスト」を送ったかどうかの確認を求めたが、同省は開示要求に応じなかった。さらに、BMJ誌は、Bell氏の雇用主であるオックスフォード大学に対しても、「長文の利益相反リスト」の確認を求めたが、同大学もこれに応じなかった。
 
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以上のように、BMJ誌の要求にも関わらず、『SAGE』と『ワクチンタスクフォース』のメンバーの利益相反は開示されなかった。このようなコロナ危機においても、政府による物資調達に関して、諮問委員などと企業間の利益相反を明らかにすることが、国民の信頼を得るために必須である。(H.O.)