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リバロキサバンなどの経口抗凝固剤(DOAC)は抗リン脂質抗体症候群患者で血栓イベント再発のリスクが上昇

2020-04-20

キーワード(抗リン脂質症候群、リバロキサバン、ワルファリン、DOAC、出血、血栓塞栓イベント、虚血性脳卒中)

 英国医薬品庁(以下MHRA)は、2019年6月19日、(1)抗リン脂質抗体症候群(以下APS)の患者、特に高リスク(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、および抗β2グリコプロテインI抗体の3つの検査項目すべてが陽性である)の患者ではリバロキサバンなどの経口抗凝固剤(DOAC)の使用は推奨されない、(2)APSと診断された患者、特に高リスクの患者では、DOACによる治療の継続が適切か否かを評価し、ワルファリンなどのビタミンK拮抗剤への切り替えを検討することを医療従事者へ助言した。これらの警告の元となった論文がTRAPS試験(※1)である。

 以下要約を紹介する。
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 リバロキサバンは心房細動と静脈血栓塞栓症の患者に使用されているが、APS患者のようなハイリスク患者での安全性有効性の証拠はない。今回医師主導の無作為化オープンラベル多施設非劣性試験(エンドポイント判定のみブラインド)では、リバロキサバン20mg/日(以下「R群」とする。但しリバロキサバンは腎排泄型なので腎機能低下患者(クレアチニンクリアランス30〜50mL/min)の場合は15mg/日)とし、ワルファリン(以下「W群」とする。)と比較した。主要アウトカムは、血栓塞栓イベント、大出血、血管関連死亡の累積発現率とした。

 試験は120症例の患者にR群59例、W群61例がランダムに割り付けられたが、R群に過剰なイベントが起こったことで早々に中止された。13人に過剰と判断されるイベントが起こりR群で4人は虚血性脳卒中、3人は心筋梗塞、4人は大出血と計11人(19%)だった。W群の2人(3%)は大出血だった。(HR 6.7;95%信頼区間 1.5−30.5 P=0.01)

 ITT解析(治療企図解析)ではR群に2例のイベントが追加された。1人は静脈血栓塞栓症、1人は心血管死だった。W群はなかった。

 リバロキサバンのアドヒアランスは良好で、原因として、この薬剤濃度の個人差が大きいことや、リバロキサバンとワルファリンの薬理作用の違いが挙げられる。リバロキサバンはXa因子のみ抑制であるのに対し、ワルファリンは凝固系の内因性と外因性の凝固因子を低下させる作用がある。

 試験は患者のリスクが高いと判断し中止。APSの高リスク患者へのリバロキサバン投与は、使用利点がないことを強く示唆した。
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 DOACは、ワルファリンと同等の効果を示す上に、より使いやすく出血も少ない画期的な薬剤であるとして大々的に発売された。DOACを散々褒めてきた研究者らは、この試験結果をどう受け止めているのだろうか。MHRAは、この試験の結果からリバロキサバンに限らず他のDOACも同様のリスク上昇の可能性があるとしている。

 国立食品衛生研究所(NIHS)もこの問題を取り上げているものの、残念ながら現場ではあまり問題視されていない。日本でDOACの使用患者数が増えているのは明らかで、改めてDOACの見直しが必要だろう。

 今回筆者らは、ワルファリンは凝固系の内因性と外因性の凝固因子を低下させるに対し、リバロキサバンはXa因子のみの抑制であること、そして、リバロキサバンは濃度の個体間変動があり一部の患者には十分な血中濃度に達していなかった可能性があるとしている。ワルファリンはPT-INRで凝固能の調整ができかつ安価であることなども考えれば、DOACは本当に優れた薬剤なのだろうかと改めて考えさせられる論文である。

 なお、当会議は、ワルファリンよりもDOAC(NOAC)の使用を推奨する「心房細動治療(薬物)ガイドライン」の作成者の利益相反問題に着目し、関係学会や製薬企業に対して公開質問状を送付するなどの活動を行うとともに、診療ガイドライン策定参加資格基準を検討中であった日本医学会に対して要望書を提出した(※2)。そして、日本医学会は、2017年3月に「診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス」を公開するにあたり、当会議が上記公開質問状を関係学会に送付したことをその理由として挙げている(※3)。(C.T.)