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EMA(欧州医薬品庁)の不透明で秘密裏の早期の科学的助言はそろそろやめるとき

2019-04-25

キーワード;科学的助言、共同開発者、規制の独占、透明性、独立性

 EMAが製薬企業に行っている、申請前の「科学的助言」に関するEUオンブズマンのパブリックコメントに対して、ISDB(国際医薬品情報誌協会)とプレスクリール誌は、共同回答(※1)を発表したとプレスクリールウェブサイト2019年1月30日(※2)は報じている。その中でEMAの不透明で秘密裏の科学的助言はそろそろやめて独立性と透明性を促進する断固とした行動をとるべきよい時期だと主張する。

 以下はその要約である。
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 個々の医薬品開発者に対して、科学的助言を、説明責任も問われず秘密裏に提供することは有害でEMAの職務とは正反対のものだ。これはEMAの公平性および信頼性を損なう。透明性がない中では、欧州市民はこれらのやりとりの量や範囲について全く知ることができず、それが有用なことなのかを評価したり、EMAが乗っ取られてしまったりするリスクにさらされているかも検証できないのだ。現在、製薬会社とEMA自身のみがEMAの助言の影響を評価する立場にあり、患者や医療専門家は心配している。承認申請前の科学的助言に関わる専門家は、その同じ薬に対するEUの販売承認の評価に関与してはならない。EMAスタッフと専門家の公平性と客観性を損なわせるリスクにさらされる、このような状況を制限することは不可欠である。EMAは製薬企業との秘密のやりとりに労力を費やすよりも、臨床研究に関する詳細で公衆がアクセスできるガイドライン文書の作成に、もっと大きな努力をはらうべきである。また治療分野ごとに「一問一答」集を作り、情報共有と透明性確保に努めるべきなのだ。
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 EMAの科学的アドバイスは、新医薬品へのアクセスを早めイノベーションをサポートするため、EMAができることとして、既存のガイダンスでカバーされない事項や必ずしもガイダンスにあてはまらない事項に関して当局の見解を求めたり、新医薬品の開発早期から医薬品開発や今後の開発戦略に関しての当局のアドバイスを受けることができるという制度だ。

 EUオンブズマンの質問は、「申請前に関わった者が申請後の販売承認に関わることの是非」「国家の権限としてそれを許可することの是非」「申請前の評価とならないような予防措置」「科学的アドバイスに関わるEMAスタッフ・専門家と申請者との関わり方の透明性、またその影響」「透明性の重要性〜スタッフ・専門家の名前、質問と回答の内容」「科学的アドバイスの範囲を制限すべきか」などだ。共同回答では、科学的助言を続けることは、EMAスタッフと専門家が医薬品の共同開発者となりまたCOIをつくり出し、独立した評価を妨げ高い承認率をもたらすこと、短期間での承認をますます早めると指摘する。一方でそれが有益だったかの評価がされず、EMAの信頼を失墜させる。透明性、独立性を高めることは必須だと主張している。

 日本の早期承認制度も同様に、相談窓口を設け承認までのプロセスを支援するシステムとなっている。安全性・有効性を独立して評価すること、その内容を誰でもチェックできるよう公開することは必須だろう。国民の安全が守られる制度を求めたい。(N)