後払いの利益相反―医薬品承認後のFDAアドバイザーへの製薬企業からの支払いが問題にされていない
2018-11-05
(キーワード:金銭的利益相反、後払いの利益相反、新薬承認審議会、
利益相反は医学論文や各種臨床ガイドラインなどでも問題になるが、特に新薬の承認を審議する委員会は厳格に利益相反を管理するシステムが確立されている必要がある。審議会に参加する委員は対象となる新薬と関連した利益相反が明確である場合は審議に参加できないのは当然である。しかし、審議が終了し新薬が承認された後はどうであろうか。
以下にScience誌 電子版(2018年7月5日)(※1)の概要を紹介する。
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FDAは新薬承認推奨を決めるFDA諮問委員会が開催される際のアドバイザーの利益相反には規則を設け対処している。抗血栓剤チカグレロル(ブリリンタ、アストラゼネカ)承認の賛否が投票される前に、FDAは4人の医師を含む投票メンバーには金銭的利益相反は存在しないと述べていた。しかし、その後ブリリンタが承認され発売されたときに、アストラゼネカおよび同様の抗血栓剤を販売・開発する製薬企業は投票メンバーだった4人の医師に金銭をシャワーのように与えた。たとえば、Ikahn医科大学の心臓専門医であるジョナサン・ハルペリンには2013年から2016年に20万ドル以上を支払った。
このブリリンタの例はいわゆる「後払いの利益相反」の適合例であり、この後払いの利益相反については問題にされることなく、全く取り締まられていない。2008年から2014年の間に28の新薬の承認審査にかかわった医師107人について、企業から医師への直接支払いを連邦公開制度のウェブサイトを使用し分析しところ、2013年から2016年の4年間に40名が1万ドル以上、そのうち26名は10万ドル以上、6名は100万ドル以上を受け取っていた。これらの支払いは学術雑誌には開示されていたが、FDAでは開示されていなかった。FDAの利益相反防止策は、このようなその後の金銭関係を防ぐようデザインされていない。非定型抗精神病剤クエチアピン(セロクエル)についての心血管リスクに関する投票の場合も同様であった。これらの調査した所見についてScience誌はFDAにインタビューを求めたが拒否された。
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利益相反管理を厳しくしすぎると、専門性の高い委員の確保が厳しくなり、審議会が成り立たないという意見がある。しかし、上記調査では、107名のうち47名は800ドル未満で34名はまったく企業から資金をもらっていないのである。後払いの利益相反を管理するシステムを早急に確立する必要がある。また、このような調査は、情報公開が徹底されている米国だからこそできることである。我が国でも早急に情報開示の徹底をすすめるべきである。(G)