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臨床研究における患者の役割と権利

2018-11-05

(キーワード: 臨床研究、患者、パートナーシップ、権利)

 患者本位の医療が言われる中で、臨床研究はまだまだ患者の関与が遅れている部分である。医学雑誌としてその充実に取り組んできた英国のBMJ誌が、2018年7月25日の電子版で「研究における患者の役割と権利 −どのような現代の研究事業にも患者との十分なパートナーシップ(協働・提携)が必須である」の論説を掲載しているので、概要を紹介する。筆頭著者はペイシェント・イノベーション(患者革新)の副代表のポール・ヴィックス氏(米国マサチューセッツ州)で、BMJ誌の患者パートナーシップ担当エディター(編集者)テッサ・リチャーズ氏などとの共著である。ヴィックス氏は「患者を第一に」をかかげる世界最大のヘルスネットワークである「ペイシェントライクミー」(私のような患者)の活動にも携わっている。
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 より良い研究には患者や公衆の関与が重要との考えが、資金提供者、規制者、会議のオーガナイザー、出版者の間で主流になりつつある。患者や公衆がを研究におけるパートナーとして関与することは、いくつかの西欧諸国で受け入れられている最良の慣習であり、一部の資金提供者はそれを当然そうしなければならないものとしている。BMJ誌はこれを支持し、投稿原稿すべてについて、患者と公衆の関与の度合いを報告するよう求めている。患者の関与といってもその内容には質的な違いが存在する。一部の研究者たちが患者を研究の対象としてみることと、患者を真の研究パートナーとして関与することを区別して扱うことに苦労しているのは明らかである。

 製薬企業は、プロトコル(研究などの実施要領)」を単純にすることによって患者や研究者が参加しやすくなることをメリットとして認識し始めている。

 患者関与を促進するために、BMJ誌は発行するジャーナル全般に、患者と公衆が臨床研究のデザイン、実行、報告にどのように関与するかについて記載を求めるよう取り組みを強めつつある。これに加えて、2019年1月から臨床研究の著者たちに、研究結果を研究参加者と関連コミュニティにどのように広めようとしているかの詳細を示すよう要求する予定である。そして研究を共同制作するための最良の方法論を明らかにするよう、関係者と協働を強めたい。われわれはこの論説で提起された課題を検討し、さらに論議するための課題を設定するための会合を今年の後半に主宰したい。研究における患者の役割と権利の現状と将来の進展に関するコメントをお寄せいただきたい。
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 日本はここで問題となっている臨床研究における患者や公衆の関与や権利について、英米などに比しさらに遅れた状況にある。しかし、医薬品をめぐるグローバル化のなかで、英米に合わせてゆいこうとする動きも加速されつつあり、一層の進展を望みたい。(T)

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