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「日本政府がインフルエンザ薬服用時の異常行動に警告 」(BMJ誌)

2018-04-16

(キーワード: タミフル、インフルエンザ、異常行動、転落死、厳重な施錠の警告)

 厚生労働省はこれまでも小児・未成人者がインフルエンザにかかった時は、抗インフルエンザウイルス剤の種類や服用の有無によらず、少なくとも治療開始後2日間は小児・未成人者を一人にしないよう注意喚起してきた。2017年11月27日厚生労働省は、さらなる転落死などの事故を受けて、高層階住居では玄関やすべての窓の施錠を行い、ベランダに面していない部屋で寝かせる、1戸建てでは1階で寝かせるなど、医療関係者が保護者などに説明・徹底するよう通知した(※1)。

 これを受け英国のBMJ誌が2017年12月2日号電子版で掲題の記事にしているので、要旨を紹介する。
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 日本の厚生労働省は、昨冬に抗インフルエンザウイルス剤を服用した54人が異常行動を起こしたとの報告から、都道府県に予防策を講じるよう通知した。ジャパンタイムズ紙によればその中にはザナミビル(リレンザ)を服用した若年者2人が転落死した事故が含まれている。異常行動を起こした54人中38人はオセルタミビル(タミフル)を服用していた。

 日本はタミフルの世界一大きい市場であり、その安全性は10年以上にわたって関心の的であった。

 2007年3月にタミフルを服用した100人以上が異常行動を示し、ほとんどが若年者だったことから、厚生労働省は10−19歳の若年者に対しタミフルを処方しないよう警告した。ザナミビルにも異常行動を起こす同様の安全性問題があった。

 同じ年に米国FDAはオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)の添付文書に強い警告を命じた。タミフルを製造するロシュ社は精神神経症状の害作用は、タミフル服用がなくともインフルエンザ罹患時にみられ、両者を区別するのは困難として規制に抵抗した。リレンザを製造するGSK社も同様に抵抗した。

 しかしコクランレビューは2014年公表非公表にかかわらずすべてのデータがオセルタミビル(タミフル)と精神神経害作用との間のリンクを示しているとした。中心となったオックスフォード大学のトム・ジェファーソンは、インフルエンザ症状を発症していない被験者にタミフルを投与した予防研究でも精神神経障害がみられることから、タミフルと精神神経障害の関係は明白とのべた。

 これらの害作用は100人に1人の割合で発生する。小児で起こりやすいとは、小児での予防試験が行われていないのではっきりとは言えない。
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 厚労省は、数々の害作用報告にもかかわらず「抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無によらず、少なくとも治療開始後2日間は小児・未成年者を一人にしない」として、相変わらずタミフルと異常行動の因果関係を認めようとしない。

 しかし、そもそも注意喚起以前の問題として、タミフルそのものの評価を見直す必要がある。2017年6月にWHOはタミフルを必須薬コアリストから降格させた。新たな有効性を示す資料がなければ、WHO専門委員会は次回のWHO必須リストからタミフルを削除することになるだろうとBMJ誌電子版2017年6月12日号が伝えている。これにはコクランレビュー(※2)による臨床評価が大きな役割を果したが、日本の研究者(林敬次、浜六郎)もコクランレビューに大きく寄与している。

 当会議は、2005年11月 (※3) と2007年4月 (※4) の2回にわたり、「それでもタミフルを服用しますか?」のアピールを出した。今回の転落死などの事故の頻発を受けての厚生労働省による「高層階住居では玄関やすべての窓の施錠を行い、ベランダに面していない部屋で寝かせる、1戸建てでは1階で寝かせる」の警告を、医療関係者が徹底させるようにとの通知は、まさに「それでもタミフルを服用しますか?」と問いかけるものでないだろうか。 (T)