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利益相反に関する米国医学生連盟の取り組み

2016-11-22

(キーワード: 米国医学生連盟AMSA、医科大学・教育病院、製薬企業との関係の管理ルール)

 米国医学生連盟(AMSA)は、1950年に創設された医学生・研修医師の独立した連合組織である。2002年から医師の処方行動が、製薬企業のマーケティングに影響されたものでなく、エビデンス(科学的証拠)に基づくものとなるよう志向する PharmFree Campaign(「製薬企業の営業活動に影響されるな」キャンペーン)を展開している(※1)。その一環として医学生連盟は各医科大学や教育病院を、製薬企業との関係を規制するルールをどれだけ厳しく定めているかなどでスコア―(得点)をつける PharmFree Scorecard活動を行い、公表してきた。

 プレスクリール・インターナショナル誌2016年7月号が米国医学生連盟の活動の成果を伝えているので要旨を紹介する。
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 製薬企業のさまざまな形での「ギフト」(贈り物)が医学生の将来の診療・処方行動、医療専門家の現在の診療・処方行動に影響を与える。

 米国医学生連盟(AMSA)は、医学教育が患者本位のものとなるように、各医科大学に製薬企業との関係を規制する厳しいルールを確立するよう求めてきた。2007年以来医学生連盟は医科大学が利益相反を最小とする目的で定めたルールに従って、医科大学にスコアをつけ公表してきた。スコアは14の基準に基づいてつけられ、それらにはギフト、食事、MRのキャンパスへのアクセス規制、講演料などの支払い、利益相反教育の実施などが含まれている。

 2014年のスコアカードによれば、米国の医科大学の3分の2以上が学生の製薬企業との関係を管理するすぐれた確固としたルールを決めており、その数は年々増えている。医学生連盟は2014年に教育病院の評価も始めたが、その3分の2が学生の利益相反を避ける確固としたルールを定めている。

 医学生連盟は、学生の利益相反に対する意識を強化するために、利益相反についてのモデルカリキュラムを作成している。
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 以前注目情報で紹介したように(※1)、英国医師会が出版するBMJ誌の論文では、ジェネリック医薬品や既存の類薬で十分代替できる治療価値の低い新薬に対する医師の処方行動を調べ、医学生への製薬企業の「ギフト」を制限する政策を持つ医科大学を卒業した医師はそうした新薬への処方が少なく、より厳しい政策を持つ大学の卒業生や長い間それらの政策にふれてきた卒業生ではさらに少ないことが示されていた。

 米国医学生連盟のこのような若々しい活動の継続に日本が学ぶことは多い。 (T)