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米国製薬企業刑事・民事罰の25年、実効のある刑罰が必要(パブリックシティズン)

2016-09-12

(キーワード: 米国製薬企業、刑事罰・民事罰の25年、罰金の「営業経費」化、再発防止策)

 米国は、製薬企業の違法行為に対する刑罰が日本よりも厳しいとはいえ、それでも再発防止のため有効に機能しておらず、上位経営幹部の禁固刑を含む実効のあるより大きな刑罰が必要と、米国の医薬品監視団体パブリックシティズンがデータを示して指摘している。

 「製薬企業の刑事・民事罰の25年間: 1991年から2015年」のレポート(※1, ※2)の要旨を紹介する。
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 1991年から2015年の25年間に連邦および州政府と製薬企業との間で合計373の和解(settlements)があり、総額357億ドル(約3.8兆円)に達する。そのうち140の和解は連邦レベルのもので総額319億ドル、233の和解は州レベルのもので総額38億ドルである。これらは商取引における不正な違反に関するものである。GSKとファイザーの和解が最も多く、支払った罰金はそれぞれ79億ドルと39億ドルに上る。

 連邦レベルでの刑事事例は、主に適応外使用のマーケティングである。同じく連邦レベルでの民事事例は、主にメディケア(連邦政府による高齢者などの医療保障制度)とメディケイド(州が実施している低所得者・生活困窮者の医療保障制度)のような納税者が拠出している医療保障プログラムに対する意図的な過大請求の詐欺(fraud)である。

 最近2年間(2014-5)の傾向として、和解の数と金額がかなり減少している。これは不法な販売促進に関する罰金の減少と、医療保険制度での過大請求に関する州レベルでの和解の減少を反映したものである。原因としては、連邦での起訴が適応外使用から他の形の不法行為にシフト、また州のメディケイドの保険償還戦略の変化や製薬企業のマーケティング戦略でのシフトの変化などが考えられる。この傾向が今後も続くかどうかは注視していきたい。

 重要なことは、上記のとおり総額357億ドルの和解があった1991年から2015年までの25年間のうち、2003年から2012年までのたった10年間に11の主要製薬企業が7110億ドルの利益をあげていることである。総計357億ドルの罰金全体でも、11主要企業の利益のたったの5%にしかならないのである。われわれの知る限り、不法行為をしても親企業がメディケアやメディケイドから外された例を知らない。またこれらの不法行為に会社を導いた上位経営幹部のほぼ全員が禁固刑を言い渡されていない。

 将来の違法行為を思いとどまらせるには、組織的な詐欺(fraud)を監督する立場の会社の上位幹部の起訴・禁固刑を含む、実効のあるより大きな刑罰が必要である。そうでないとこの違法な、しかし儲けになる行為は、罰金は営業経費の一部分となるビジネスモデルの一環として今後も続けられるであろう。
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 日本では、現在行われているディオバン裁判のなかで製薬企業と医師が販売促進のために臨床データを操作したことが明白になってきているが、同時に不正行為を取り締まる法律が十分整備されていないことが問題となっている。

 いのちと健康に関わることであり、速やかな改善が必要である。   (T)