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医薬品の治療上の価値について、フランスとスエーデンの評価の比較

2004-09-30

医薬品の治療上の価値について、フランスとスエーデンの評価の比較
 (キーワード:  医薬品の治療的価値、スェーデン医薬品医療機器庁、
 フランス・プレスクリール誌、ISDB(医薬品独立情報誌国際協議会))

 International J Risk & Safety in Medicine誌最近号(16,83-90,2004.7)の記事です。
「医薬品の治療上の価値の判定: プレスクリール誌と、スェーデン医薬品医療機器庁発行
のInformation from Laekemedelsverket誌との比較」と題して、新薬の評価判定がどの
ように一致し、どんな理由でその判定が異なってきたかが、評価法と共に検討されてい
ます。このような医薬品の治療的価値の評価判定は、米国のFDAも以前行っていた時期が
あります。

 掲載誌のInternational J Risk & Safety in Medicine誌は、オランダIOSプレスが年
4回発行している医薬品監視、患者安全を掲げた専門誌で、Dukes(ノルウェー、有名な
「Mayler副作用書」の1973―2000年版の編者)とvan Boxtel(オランダ)が共同編集して
います。患者からの直接の害作用(副作用)報告の大切さを訴えた英国のチャールス・
メダワーのパキシル論文もこの雑誌に投稿されました。この雑誌は、これまでは「医薬
品副作用」をサブタイトルにしていましたが、この号からは表紙やサブタイトルも一新し、
「医薬品監視、患者安全」を強調し、有効性の欠如なども含め、より意欲的に取り組んで
いくと巻頭言で述べられています。

 論文は、スェーデン医薬品庁のAhlqvist-Rastad、Beermannとフランス・プレスクリール
誌のBardelay、Mignotの共著となっています。ここで比較の対象になっている二つの国
の医薬品情報は、スエーデンの情報は製薬会社から承認審査のために医薬品庁に提出さ
れた臨床試験の資料ですが、フランスのプレスクリール誌は、これとは異なり製薬会社か
ら独立して医薬品の治療的価値を評価する民間市民団体の医薬品情報誌であるため、医
学雑誌などに論文掲載された資料や情報公開された資料に主に依存しています。プレス
クリル誌は、英国のdtb、米国の The Medical Letter誌とともに、WHO(世界保健機関)
が推奨する世界の3つの医薬品情報誌のひとつで、フランス語の月刊誌とともに、隔月刊
の英語版プレスクリール・インターナショナル誌が発行されています。
 
 このようにいわば行政と民間という異なった立場にいる両誌の人たちが、今回の論文
を共著としてまとめている背景には、両誌がともにISDB(医薬品独立情報誌国際協議会)
に加盟していることがあります。ISBMの加盟誌は、企業からの独立性という点では共通
していますが、日本の「正しい治療と薬の情報」誌(TIP)、「薬のチェックは命のチェック」
のような全く在野の情報誌と、英国のdtb(Drug and Therapeutics Bulletin)誌のように
政府が一括購入して国営保健サービス(NHS)の医師全員に合理的な薬物治療のために無料
で配布している情報誌、オーストラリアのThe australian subscriber誌のように政府が
資金援助しインターネットでも無料提供している情報誌、それに政府自体が発行者のこ
のスェーデンの情報誌など多彩です。

 この論文ですが、結論として、1997-1999年に両誌がレビューした新薬54医薬品につい
て、スェーデンで行われているRosen評価法(米国FDAで行われていた評価法を修正したも
の)で評価しなおすと、54医薬品のうち40医薬品(74%)の評価が完全に一致したと報告し
ています。評価が一致しなかった25%についての理由ですが、効果のエンドポイントの
おき方の違い、売り込み攻勢の強弱や、市場における要請度合い、臨床試験の解釈の違
い、入手できる情報源の差などが、それぞれの薬について述べられています。行政サイ
ドと市民サイドという両誌の基盤の違いを考慮すれば、74%の一致率は十分高いものです。

 著者たちは国際的に共通した治療的価値による分類システムを考える上で、「治療進
歩に関するISDB宣言」(「正しい治療と薬の情報」2001年12月号に翻訳して掲載されてい
る、TIP 16,124-128,2001)は良い基盤になると述べ、治療的価値の劣る医薬品や、医薬
品の未知数部分も考慮に入れた新たな分類法を提案しています。
                              (T)

関連資料・リンク等