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世論調査は、バイオ製薬企業が患者よりも自己の利益を優先させていると判断

2016-01-12

 スクリップ誌電子版2015年8月20日
(キーワード:バイオ医薬品、高価薬、カイザーファミリー基金)

 バイオ医薬品とは、「遺伝子組換え、細胞融合、細胞培養などのバイオテクノロジーを応用して製造されたタンパク質性医薬品」とされ、抗癌剤の分子標的薬やリウマチ疾患治療薬の生物学的製剤、インスリン製剤、インターフェロン製剤や成長ホルモン、エリスロポエチン製剤、最近話題のインターフェロンフリーのC型肝炎治療剤などがある。

 バイオ医薬品は一般的に高度な製造技術が必要で開発費用も大きいとされ高薬価のものがほとんどである。従来の治療薬剤よりも効果が確実で有用性が高く、標準治療薬とされているものもあるが、患者負担が大きいため治療継続をあきらめる患者も少なくない。近年承認されたインターフェロンフリーのC型肝炎治療剤の価格があまりにも高価格であることが世界的に注目されている。世界で最も医薬品費が高い米国における世論調査の結果をスクリップ誌電子版(2015年8月20日)が伝えている。

 以下にその概要を紹介する。
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 米国の非営利団体カイザーファミリー基金が行った世論調査(カイザーレポート)では、72%が処方箋薬の価格が納得できるものでないとし、バイオ製薬企業による高薬価設定を抑制する方策がとられることを望んでいる。

 62%は過去20年間の処方せん薬の進歩がこれらの医薬品を使用した患者の生活を改善させたことを認めている。

 しかし、回答者の74%がバイオ製薬企業は患者よりも利益を重視しているとしている。これは製薬企業が改善したいと長く努力してきた企業イメージである。

 今回のカイザーレポートは米国人の1番大きな懸念が薬剤費であるとする4月に発表した調査結果に続くものである。ギリアド社のC型肝炎治療剤ソバルディの高価格などがもたらした新薬の高価格問題は、2016年の大統領選挙、議員選挙の焦点となるともみられている。

 経済学者もバイオ製薬企業の政府による過保護を問題にしている。

 回答者の86%は製薬企業の新薬価格の設定根拠の情報公開を求めており、81%が情報公開は価格低下をもたらすと考えている。

 83%は米国連邦政府がバイオ製薬企業とメディケア(高齢者公的医療保険)でカバーされる医薬品の価格を下げる交渉をすべきと考えており、72%はそのことでコストがコントロールされると考えている。

 また、76%はC型肝炎や癌の治療薬などは米国人が支払うことができる価格に制限すべきと強く主張している。

 72%は処方せん薬をカナダから個人輸入することが許されるべきとしている。

 これに対し、バイオ産業テクノロジー協会(BIO)は、米国医療システムの持続可能性を脅かしているのは医薬品の価格ではなく病気のコストであるとし、病気を治療する新薬が無ければ、病気のコストはますます上がってしまうと主張している。
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 医療保険制度や薬価制度のちがう米国の状況を日本にそのままあてはめることはできないが、バイオ医薬品等の高価格問題は日本でも大きな問題であることはまちがいない。

 C型肝炎の新薬だけではなく、最近発売された抗癌剤の中には1ケ月の薬価額が50万から100万というものもそれほど珍しくなくなってきている。

 少なくともバイオ製薬企業は各薬剤の開発費を情報公開し、高薬価の設定根拠を明確にする必要がある。(G.M.)

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