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カナダ研究者からのHPVワクチン接種一時停止の要望で議論が白熱

2015-11-17

(キーワード: HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン、被害者、カナダ、一時中止の要請、有用性論争過熱)

 日本で積極的接種勧奨が停止され、接種の可否が論議されているHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて、カナダの状況を英国のBMJ誌電子版2015年10月23日号が、モントリオールから伝えている。その要旨を紹介する。
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 カナダ政府から助成を受けてワクチン被害者の経験について調査するある研究者が、HPVワクチン接種について、安全性が確立されるまで直ちに停止すべきだと求めている。その研究者とは、モントリオールのコンコーディア大学のGeneviève Rail教授で、カナダヘルスリサーチ研究所からHPVワクチンに関連する研究に対して約2500万円の助成を受けている。同教授のレポートには、ワクチン被害による重い苦しみを語る170家族のストーリーが集積されている。

 Rail教授 と、共著者である Abby Lippman氏(元マックギル大学疫学・生物統計学・職業衛生学教授)は、ケベックの日刊新聞「ル・デボワール」紙において、HPVワクチンが女子生徒たちに適切なインフォームドコンセントなしに投与されたと主張している。同教授らは、ワクチンが世界中で重篤な有害事象を引き起こしたこと、カナダの副反応報告システムが問題を見つけるのに不適切なこと、子宮頸がんは死亡の主な原因でなく誤って優先課題とされたこと、ワクチンの効果は証明されていないこと、前がん病変を悪化させることさえあること、早まって販売承認され欺瞞的に販売されていることなどを述べている。また、同教授らは、「世界中でワクチン接種された少女たちは、製薬会社だけがその秘密を知っているドラマの主人公である」と述べている。

 これに対し、ワクチンの推進者たちは、同じ「ル・デボワール」紙上で、Rail教授たちの記事を「無責任」とし、すみやかに反撃した。同記事には、35名の医師・科学者、カナダの産婦人科学会が署名していた。

 Rail教授は、BMJ誌において、「我々はワクチンの効果の問題だけに焦点をあてることはできない。我々が問題にしているのは、被害者の少女たちが被っているホラーストーリー(恐怖の物語)で、同じことが世界の他の場所でも起こっているのだ」と述べた。また、Rail教授は、日本、イスラエル、イタリアにおいてHPVワクチンの推奨が取り消されたと述べている。

 欧州医薬品庁(EMA)は、2013年のデンマークにおける有害事象報告の急増を受け、2015年夏にHPVワクチンの安全性レビューを命じた。しかし、デンマーク医薬品庁の市販後調査データでは、有害事象の数は日本のワクチン推奨中止が伝えられたあと急増し、その後減少している。

 先ほど紹介した中止派のLippman氏は、「ワクチン接種を受けた少女たちは、自動的にがん登録した上でフォローする必要がある」「さらに研究が進むまで学校での接種は中止すべきだ」「予防原則の要請である。まず第一に、害をなしてはならない」と述べた。

 「ル・デボワール」紙上での推進派と中止派の論争は、両サイドが新たな論説を用意していると言明していることから、今後も続くことになりそうだ。
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 HPVワクチンの被害者が置かれた状況、安全性をめぐる論争の様相は、日本も世界も同じであるということに気づかせてくれる記事である。

  カナダで論争の渦中にあるGeneviève Rail教授の研究が、ワクチン被害者の170家族の「ストーリー」を起点とするものであることに注目したい。
 「ストーリー」という言葉は、当会議の2014年7月のシンポジウムにおけるアンドリュー・ヘルクスハイマー氏の講演のキーワードである。氏は、これまで規制当局や製薬企業、医薬専門家が作り上げてきた医薬品監視の方法論には、肝心の患者の声が反映されていないと指摘し、「ストーリー」を重視することの必要性を説いた。
  これに対し、2014年12月に開催されたHPVワクチンに関する日本医師会と日本医学会の合同シンポジウムでは、厚生労働省の副反応検討部会の座長が「サイエンスに基づくべきであり、個々の副反応症例のストーリーから問題を掘り起こしてはいけない」と述べていた。

  患者のストーリーは決してサイエンスと対立するものではない。ストーリーを起点として仮説を立て、検証し、再びストーリーに立ち返るという真摯な試行錯誤こそがサイエンスの過程なのではあるまいか。ストーリーを抜きに真実に近づくことができると思うのは思い上がりであろう。論争の本質が見えてきたように思われる。                            (T・M)
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関連資料・リンク等

http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=421
子宮頸がん予防ワクチン 推進するWHOの影にゲイツ財団と製薬企業