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WHO必須医薬品リストが19版の更新、C型肝炎治療剤などをリストアップ

2015-11-17

(キーワード:WHO、必須薬リスト、エッセンシャルドラッグ、ソバルディ)

 世界保健機構(WHO)は、「必須医薬品薬モデルリスト」の最新版(第19版)を発表した。新たにリストアップされた医薬品に、C型肝炎の画期的な新薬「ソバルディ」(一般名ソホスビル)や抗がん剤「ハーセプチン」「グリベック」など先進国でも高価すぎることが問題となっている医薬品が含まれていることが注目されている(※1)。WHOの必須医薬品リストコンセプトは、発展途上国での医薬品供給不足の解消、適切な医療水準の確保を目的として考案された概念で、「人口の大部分におけるヘルスケア上のニーズを満たすものである。 そのために、適切な量・適切な剤形で個人やコミュニティが入手しうる価格であるべきである」と定義されている。このため、WHOがこれらの高価な医薬品をリストに加えたことは「低価格化への圧力」と見る向きもある。以下は2015年5月8日のWHOプレスリリース(※2)の概要である。

 WHOは、C型肝炎、多剤耐性肺結核、および癌を救命するための医薬品アクセスを改善するように動き出す。

 2015年5月8日、WHOはC型肝炎、各種癌および多剤耐性結核等の画期的な新薬を含む「必須医薬品薬モデルリスト」の最新版を出版した。この動きは、明らかに治療上のベネフィットがあり、全世界の公衆衛生に大きな影響をもたらす画期的新薬へのアクセスを改善する道を開く。「深刻で広範囲な疾患に対する画期的な新薬が登場するとき、その医薬品を必要とする誰もが手に入れることを保証することは重要です。それらをWHO必須薬モデルリストにのせることはその最初のステップです」とWHOのマーガレット・チャン博士は言った。WHO必須薬モデルリストは、世界中の政府と組織が自国の必須薬リスト作成において、医薬品の有効性、安全性、品質、費用対効果などについて、他の同効薬と比較検討するために活用されている。リストは、2年ごとに専門家委員会によって更新される。

 今年、委員会はいくつかの非常に有効性が高い医薬品へのアクセスと使用を促進するための行動をとる緊急の必要性を強調した。しかし、その医薬品のいくつかは高収入国においてさえ現在高価すぎる。

 C型肝炎ウイルス治療薬としては、副作用が少なく、非常に有効性の高い経口の直接作用型抗ウイルス剤「ソバルディ」「ダクルインザ」を含む5つの製品がリストに含められた。しかし、それらの薬品は高価すぎるので、必要な人のほとんどが使うことができない。
 
 がん分野では、リストの全面的な改訂が行われることになり、16の新薬を含む30の治療が確認され、乳がん治療薬「ハーセプチン」などが含まれている。

 抗結核剤としては、5つの新製品がリストに加えられbedaquilineと「デルティバ」は多剤耐性結核をターゲットとしている。

「必須薬医薬品リストはスターティングブロックであり、フィニッシングラインではないと理解することは重要です。その目的は、臨床と公衆衛生の展望から薬の優先度を付けるためのガイダンスを提供することです。ハードワークは、それらの薬を実際患者に利用可能にさせる努力から始まります。」とカイニィ博士は締めくくった。

 今回リストに追加された「ハーセプチン」「グリベック」は高薬価ではあるものの、癌治療における標準薬ともいえる薬剤であり、発売から10年以上が経過していることから、ジェネリックの発売も開始されている。このため、今後は高収入国以外の国でも使用できる価格に低下していくことが見込まれる。これに対して「ソバルディ」は2013年12月に初めて米国で承認された新薬であり、当面ジェネリックの発売がないため先進国では高薬価が維持されると思われる。WHOは、メーカーであるギリアド社が高収入国以外の国における治療アクセス改善のために行政機関とライセンスについて交渉することを計画しているとしている。低価格化の先例としては抗HIV薬をあげており、ソホスビルの価格が下がる可能性は充分あるとしている。日本において1錠400mgが6万1799円の超高薬価薬の「ソバルディ」が今後高収入国以外の国では価格が下がり、期待どおりに治療アクセスが改善されるのかどうか注目していく必要がある。 G.M.