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製薬企業が及ぼす影響のエビデンスは、医科大学のコア・カリキュラムに含め教育されるべきだ

2014-05-14

(キーワード: 医学教育、コア・カリキュラム、製薬企業の影響、医療倫理)

 英国医師会の発行するBMJ誌は、すでにたばこ企業が資金を出している研究は掲載していない。
BMJ誌電子版2014年1月14日号は、「医学ジャーナルは製薬企業が資金を出している研究の掲載をやめるべきか」のディベート記事を掲載した。やめるべきだとする側は製薬企業が資金を出した研究は医薬品を売りたいためのゆがみをもち信頼できなく、掲載をやめるよう主張した。一方やめなくてよいとする側は、それは製薬企業の根源的なことではなく、現在はあるべき姿にと変わりつつある途上であり、掲載しないというような極端なことは避けるよう主張した。
 これに対し、BMJ誌電子版2014年2月12日号は、上記ディベートとは別の観点から、製薬企業が医師に与える悪い影響という問題の解決のために、医学教育での取り組みが非常に大切でないかとのBen Goldacre氏の意見を掲載している。以下はその要旨である。
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掲載をやめるべきだと主張する側は、問題をどのように解決していくかの提起が不十分である。ひとつの重要な選択肢が奇妙にもこれまで無視され続けている。それは、医学教育のコア・カリキュラムや医師の資格試験で、これまで製薬企業が医師の診療に及ぼしてきた悪い影響のエビデンスをしっかりととりあげ教育することである。

 われわれが最近実践してきたモデルでは、研究のデザインと個々の論文を題材とした批判的吟味についてしっかりと教育している。これらは明らかに現在の教育の中で不十分である。これらの重要性は決して見過ごしてはならない。製薬企業は自分たちの製品の売り込みのために世界で9000億ドル(約90兆円)の膨大な費用を投じて、医師たちの処方に影響を与えようとしているのだ。

医師たちは製薬企業の主張の落とし穴とバイアスをもった宣伝について教育されねばならないと考えている。それは多くの命を救う医薬品を産み出してきた製薬企業を、害悪を及ぼす存在と決めつける過激な示唆ではない。それは単に医師の処方をゆがめる可能性のある影響に直面して、根拠に基づいた診療にと改善するための実際的なアプローチなのだ。
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日本の医学教育や薬学教育では、薬害被害者たちの要請により薬害教育について一定の前進があった。しかし、ここで述べられている、製薬企業が及ぼしてきた否定的な影響のエビデンスをしっかりと教育するなど、患者主体の医療や医療専門職のプロフェッショナリズムにとって重要な倫理教育は、極めて不十分な状況にある。論文の批判的吟味の実習なども合わせ、改善されねばならない。
              (T)

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