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英国議会決算委員会が臨床試験データアクセス不備を批判、政府のタミフル備蓄を疑問視―タミフルが有効かどうか意見の一致がない

2014-03-05

(キーワード: タミフル、臨床試験データアクセス、備蓄の根拠、英国議会)

 英国議会決算委員会は「臨床試験情報とタミフルの備蓄」に関する2013-14年のレポートを公表した(※1、※2)。
 決算委員会は、タミフル臨床試験データが全面的に情報公開されていないことを批判するとともに、タミフルが合併症と死亡を減らすという有効性についての意見の一致がないままに、政府がタミフルの備蓄を進めていることを批判している。
 以下は決算委員会のレポートの要旨である。
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1. 臨床試験について

 われわれは現に英国で処方されている医薬品に関する臨床試験の方法や結果についての情報が、医師や研究者に提供されていないことを発見して驚き、関心をもっている。われわれは政府がすべての臨床試験情報へのアクセスを確かなものとするよう行動することを求める。

 臨床試験データは医薬品が有効で安全なことを示す根幹となるデータである。それらは全面的に公開され、医師や研究者が利用でき、第三者によって広く吟味される必要がある。

 われわれはまたNICE(英国国立医療技術評価機構)が、費用対効果を評価するのに必要な情報を得ていないのではないかと大きな懸念をもっている。NICEは医薬品庁を経由せずに直接企業に必要な情報を要求する権限がなく、そのため本来の目的を果たせていない。ドイツでは企業はNICEに相当する機構であるIQWiG(医療の質・効率研究所)に臨床試験のフルリストとレポートを提出する法的義務がある。われわれはNICEも同様の権限をもち、その職務を果たせるよう求める。

2. タミフルについて

 政府はインフルエンザの治療剤であるタミフルをパンデミックでの使用のために4億2400万ポンド(約720億円)もかけて備蓄している。しかし、タミフルがとりわけ合併症と死亡を減らし、本当に効くのかについては意見の一致がない。それらを明らかにする情報を企業は提供していない。また、企業が承認審査時に必要なデータをすべて行政庁に提供しているかについてもコンセンサスがない。最近コクラン共同体がすべてのデータの提供を受けたとされているが、コクラン共同体によりこれらのデータを用いた新たなレビュー結果が出たときには、行政庁は過去のタミフルの有効性判断を見直す必要がある。

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 タミフル備蓄をめぐる状況は日本でも同様である。英国議会の超党派の決算委員会が公衆衛生の立場からこのようにレポートし、政府にしっかりとした提言をしていることは、日本の現状と比較して非常に注目される。                        (T)
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