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新薬の処方は画期的新薬を除き販売承認後7年経過してからに (安全のための7年ルール)

2013-01-09

(キーワード: 安全な処方のための7年ルール、パブリックシティズン、新薬シフト)

 オーストラリアの医薬品情報誌オーストラリアン・プレスクライバー2012年5号は、論説で米国の医薬品監視団体パブリックシティズン・ヘルスリサーチグループのシドニー・ウルフ代表が執筆した「安全な処方のための7年ルール」を掲載した(※1)。

 パブリックシティズンの発行する ベストセラー “Worst Pills, Best Pills” (最悪の薬、最善の薬)は、新規性に乏しく市場での安全性が確認されていない新薬に対して、承認販売後7年間用いないよう呼びかけている。オーストラリアン・プレスクライバー誌の記事は、その根拠などについて解説したものである。その要旨を紹介する。
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 われわれ(パブリックシティズン・ヘルスリサーチグループ)は、1999年に画期的新薬を除くすべての新薬の使用を、FDAが承認してから5年間待つようアドバイスすることを決定した。この推奨は安全性面で新たな黒枠警告がされるか、または市場から撤去される医薬品は承認後5年以内に多いという印象に基づいていた。

 しかし、2002年にわれわれがJAMA誌に発表した大学との共同研究で、1975年から1999年の間に米国で承認された548の新薬について調査したところ、5年間では不十分なことが判明した。この25年間において、新たな黒枠警告がつくか市場撤去される新薬は、20%にも上ると推定された。また、これらの半分は、販売後7年以内に起こっていた。そして、安全性の問題が原因で市場撤去された16の医薬品のうち15(94%)は、7年以内に市場撤去されていた。

 このことからわれわれは、5年ルールを7年ルールに変更し、画期的な医薬品以外の新薬は承認後7年経過するまで「使用しない」という分類にした。

 市場撤去ないし新たな黒枠警告を設定するまでの期間は、FDAが強いエビデンスに対して判断を遅らすことがなければ、もっと短縮できる。

 例えば、ダイエット薬シブトラミンは1997年の販売承認のときに循環器リスクのエビデンスは、すでに明らかであった。われわれは、2002年にシブトラミンを市場撤去するようFDAに市民請願(citizen petition)した。しかし、FDAが市場撤去を決定したのは2010年であった。

 すべてのフルオロキノロン抗生剤に対し腱炎・腱破裂のリスク増加についての黒枠警告をする際も、非常に遅れた。警告がなされたのは,われわれが市民請願を行い,さらに訴訟を提起してからやっと行われたのである。

 近年、FDAは、企業にリスク管理計画の作成を要求するようになった。しかし、これらの計画はそれまでに知られたリスクに基礎を置くものである。
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 日本では、新薬が出るとすぐそれに切り替わり、高価な新薬が財政を圧迫するとともに、安全性問題につながる「新薬シフト」と呼ばれる現象が特に顕著である。一部の医療機関では、画期的新薬は例外として、販売後6か月から1年程度採用を待つという取組みが行われている。

 過去のデータに基づき「安全な処方のための7年ルール」を提起している米国パブリックシティズンの取り組みは参考になる。なお、7年間使用しないというのは酷でないかという批判があるかもしれないが、米国でも医師の新薬志向は顕著であり、誰も使わなくなるということは実際にはないとの判断もあると思われる。 (T)