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新世代経口抗凝固剤は急性冠動脈症候群患者での出血を顕著に増加させ、日常的な使用は正当化されない

2013-01-09

(キーワード: 新世代経口抗凝固剤、急性冠動脈症候群事後管理、出血増加、有用性)

 ワーファリンに代わる新世代経口抗凝固剤 (ダイレクトトロンビン阻害剤、抗Xa凝固因子剤)の販売促進活動が活発に行われている。これらの薬剤は言われているように画期的なものなのであろうか。

 米国医師会の発行する内科学アーカイブ誌オンライン2012年9月24日号が、「急性冠動脈症候群後の抗血小板治療を受けた患者における新世代経口抗凝固剤の使用―ランダム化比較試験のシステマティックレビュー(系統的レビュー)とメタアナリシス(総合解析)」の論文を掲載している。

 著者はハンガリー科学研究基金のKomocsi Aたちである。内科学アーカイブ誌編集部が外部の識者に依頼し同時に掲載された関連する論説は、“No place for Novel Oral Anticoagulants in”(新経口凝固剤は居場所がない、存在意義に欠ける)という印象的なタイトルで、新世代経口凝固剤は急性冠動脈症候群患者での出血を顕著に増加させ、日常的な使用は正当化されないと結論づけている。

 この論文を検討した英国国民医療サービス(NHS)のレビュー・普及センター(CRD)は、大出血の有意な増加がこれらの薬剤のベネフィット(利益)を帳消しにするという系統的レビューと総合解析を行った著者たちの結論は、研究結果が全体として矛盾なく調和しており、著者たちの結論は支持されるとコメントしている(※1)

 以下に原論文の要旨を紹介する。
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急性冠動脈症候群(不安定狭心症、STセグメントが上昇した心筋梗塞、STセグメントの上昇のない心筋梗塞)を来たした患者は、再発防止のため二重抗血小板療法(アスピリン+クロピドグレルなどの抗血小板剤)がなされるが、血栓イベントが起こるリスクはなお大きい。二重抗血小板療法に付加してダイレクトトロンビン阻害剤、抗Xa凝固因子剤の使用が論議されている。われわれの研究の目的は、急性冠動脈症候群の患者にこれら新世代経口抗凝固剤を使用する有効性と安全性をプラセボとの比較で評価することにある。

 2000年1月1日から2011年12月31日に発表された7つのプラセボ対照比較試験(31,286症例)を対象にした。有効性尺度は、ステント血栓、全生存、大虚血性イベントを含み、一方大出血イベントで定義づけた心筋梗塞における血栓は安全性尺度として用いた。全体的な臨床ベネフィットは、複合虚血性イベントと大出血イベントの合計として計算した。

 その結果は、
1) 副作用の大出血イベントが3倍にドラマティックに増加した(オッズ比3.03、95%信頼区間2.20-4.16、p<0.001)。
2) 効果は、ステント血栓、複合虚血性イベントは有意に低下するものの、その程度は大きくない。全生存には影響しない。
3)  新世代経口抗凝固剤は、全体的な臨床ベネフィットに対してプラセボに勝る利益をもたらさなかった(オッズ比0.98、95%信頼区間0.90-1.06、p=0.57)。
 治療の中断の割合が高く、4分の1以上の患者が中断した(平均26.4%、 範囲12.0-44.0)。

 結論として抗Xa剤、ダイレクトトロンビン阻害剤の使用は大出血イベントのドラマティックな増加をもたらす。このことで急性冠動脈症候群後に抗血小板療法を受けている患者にもたらす虚血性ベネフィットのすべてが帳消しになるかもしれない。
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 日本において新世代経口抗凝固剤の売り上げが活発な販売促進活動の結果大きく伸びている。「新薬シフト」といわれる現象である。医療費が増大し、健康保険の危機がいわれるなかで、新薬に飛びつくのでなく、ワーファリンのような長く試されずみの薬剤を大事に使っていきたいものである。  (T)
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