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「薬害肝炎の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」元委員らが第三者監視評価組織の創設に関する意見書を提出

2011-11-29

(キーワード:薬害肝炎 検証 再発防止 最終提言 第三者監視評価組織)

 薬害肝炎の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会(以下、「薬害肝炎検証再発防止委員会」という)の第三者監視評価組織ワーキングチーム及び同委員会の多数の元委員が、2011年11月8日、厚生労働大臣及び厚生科学審議会医薬品制度改正検討部会委員長に対し、「薬害肝炎の検証及び再発防止のための薬事行政のあり方検討委員会『最終提言』に基づく第三者監視評価組織の創設に関する意見書」(※1)を提出した。以下はその要旨である。
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 薬害肝炎検証再発防止委員会は、薬害肝炎事件の発生及び被害拡大の経過及び原因等の実態について、多方面からの検証を行い、再発防止のための医薬品行政の見直し等について提言することを目的として設置され、2年間の検討を経て2010年4月28日に「最終提言」(※2)を公表した。

 そして、この「最終提言」の実行のために必要な薬事法改正を行うために、厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会(以下、「検討部会」という)が設置されたが、検討部会の審議においては、上記「最終提言」の議論が十分に反映されていない。

 特に、「最終提言」では、薬害の発生及び拡大を防止するため、医薬品行政機関とその活動に対して監視及び評価を行うことを目的とする第三者監視評価組織の創設が提言されている。そして、その具体的な内容をとりまとめるにあたり、薬害肝炎検証再発防止委員会内にワーキンググループを設置して検討を重ねた経緯がある。

 とりわけ重要な課題とされたのは、薬事行政全般にわたる監視評価機能を果たすために、「独立性」「専門性」「機動性」を備える組織のあり方と運営形態であった。

 この点、独立性確保の観点からは、「庁」と同格の組織(国家行政組織法第三条に規定する委員会。以下「三条委員会」という)として、厚生労働省から独立した組織を設置することが理想的である。しかし早急な実現の観点から、最終提言は、当面の対応として、厚生労働省に設置する委員会・審議会(国家行政組織法第八条に規定する委員会。以下「八条委員会」という)として設置し、他方で、独立性の観点から、既存の審議会等とは異なる新たな仕組みを作ることを提案した。

 ところが、現在、検討部会においては、第三者監視評価組織の創設につき、厚生科学審議会に部会として新設するという案が提案されている。検討部会事務局は、審議会等の整理合理化に関する基本計画(平成11年4月27日閣議決定。※3)により、新たに基本的政策型審議会を新設することはできず、厚生科学審議会等の既存の基本的政策型審議会で対応せざるを得ないと説明する。

 このような提案は、薬害再発防止という最終提言の最大の目的を没却するものである。すなわち、厚生科学審議会には、もともと独自に医薬品行政等を監視・評価し、提言・勧告する権限はない(厚生労働省設置法8条)。また、厚生科学審議会の一部会とすることは、独立性、機動性の観点から問題がある。更に、上記閣議決定による合理化の目的に照らせば、薬事行政の抜本的改革の一環として行う第三者監視評価組織の創設は可能であり、実際必要性の高い委員会等については、八条委員会の新設が行われている。

 以上から、最終提言が提言する第三者監視評価組織は、厚生科学審議会の部会とすることはふさわしくなく、既存の審議会とは別個の独立した審議会・委員会として創設し、この組織に法律上一定の調査・意見具申・勧告等についての権限を与えることが必要である。
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 2011年10月19日に行われた検討部会において、既存の厚生科学審議会の部会を新設することで対応するとの「方向性」案が出されたことに対しては、薬害肝炎原告団・弁護団も「『医薬品等監視・評価委員会議』に関する要請書」を厚生労働大臣に提出している(※4)。
 薬害肝炎検証再発防止委員会の最終提言の実行のため、厚生労働省は、この検討部会を含め、形式的には様々な検討を行っているが、実際には最終提言の内容が骨抜きになっている。
 例えば、最終提言に基づき厚生労働省が提案した「医薬品リスク管理計画(RMP)ガイダンス案」(2011年10月31日注目情報(※5)参照)や最提言された薬害研究資料館の設立(第8回「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」(※6)参照)において厚生労働省は消極的姿勢を見せている。
 真に薬害再発防止につながる第三者監視評価組織の創設を実現するため、検討部会の議論を注視していく必要がある。(MG)