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イタリアが欧州の条件付きの保険償還への急進な動きをリードしている

2011-09-27

(キーワード: イタリア、条件付き薬剤費保険負担契約、条件付き保険償還)

 医療費高騰などの状況を受け、海外では医薬品のかけた費用と得られる利益との関係(費用対効果)に注目し、限られた予算のなかで必要な医薬品を効率的に国民に供給しようという動きが強まっている。

 医薬品の販売承認はまだ有効性・安全性のみのデータでなされるため、とりわけ欧州では、保険適用(保険償還)の段階で二回目の評価として費用対効果の評価を行うという形が普通になっている。

 なお、保険償還とはもともと支払った医療費を払い戻すという意味であるが、保険で全額負担するなども含め、保険負担のあり方を示す包括的なことばとして用いられている。

 二重評価の一環として、とりわけ高価な抗がん剤については、効いた場合には保険で支払うが、効かなかった場合は製薬企業が負担するというシステムなども工夫されている。

 そうした動きについて、ピンクシート誌2011年5月2日号が「イタリアが欧州の条件付きの保険償還への急進な動きをリードしている」と題して記事にしている。以下はその要旨である。
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 イタリアは、とりわけ抗がん剤などの新薬が、企業が主張するようには効かなかった際に料金を払い戻す強力な条項をもった条件付き薬剤費保険負担契約(managed entry agreements)を、他の欧州諸国よりも熱心に推進している。この払い戻しを支えていくために、イタリアでは20の地域にわたるアウトカム(医薬品がもたらした結果)データの収集が行われている。

 2006年以来、イタリア政府は製薬企業にリスクを共有させるようにした条件付き薬剤費保険負担契約を提案してきた。その中には、効かなかった症例に関しては全額を企業負担となる(保険償還しない)契約も含まれる。

 効果に応じて払い戻しがされるこれらはいずれも、特別の条件下のものであり、期間が限られ再評価の対象となる制度である。16の抗がん剤が条件付き薬剤費保険負担契約の対象となっている。

 最も多いのは、効かなかった症例に関しては全額を企業負担となる(保険償還しない)契約で、これにはアストラゼネカの非小細胞肺がん治療剤ゲフィチニブ(商品名イレッサ)やノバルティスAGの腎がん治療剤エベロリムス(アフィニトール)が対象となっている。

 効かなかったものにまで保険は支払えないというのはもっともな話ではあるが、こうしたことを現実のものとするには、注意深い患者のモニタリング(監視)とフォローアップ(追跡)が求められる。

 医薬品庁AIFAの登録モニタリング制度は条件付き保険償還制度(条件付き薬剤費保険負担契約)だけでなく、多くの保健用途に役立てられている。抗がん剤が中心だが、2006年以来13万5000名が登録され、49の薬剤、75の適応に及んでいる。

 このような条件付き薬剤費保険負担契約は、フランスや他の欧州諸国にも広がりつつある。(T)

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