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FDAが情報公開について第三次提言を行う ー規制する製薬企業に向けて

2011-05-20

(キーワード:FDA、製薬企業、透明性、情報公開、Transparency Initiative、FDA Basics)
 
 米国FDA(食品医薬品局)のマーガレット・ハンバーグ長官は、2009年6月にFDAの「透明性改善策(Transparency Initiative)」を打ち出し、内部に専門委員会(Task Force:委員長は副長官のシャルフスタイン氏)を設置した。これによって2010年1月には、情報公開サイト“FDA Basics”が作られた(第一次提言、訳注1、※1)。続いて、公益のためにFDAは新たに何を公開すべきか具体的な議論がなされた結果、副作用報告、臨床試験、新薬承認等に関する広範囲にわたる事項が第二次提言として出された(2010年5月、※2)。
 この過程で企業から出された多くのコメントや要求に応じて、企業向けの情報公開についても検討が行われた結果、2011年1月6日第三次提言となった(※3)。「企業向け“FDA Basics”」と名づけられた提言素案には、FDAが企業向けに今後行うべき5つの提案(Draft Proposals)とその具体的な行動項目(19項目、 Action Items)が書かれている。
 ピンクシート紙(2月10日号)が、この提言の素案を紹介しコメントをつけているので以下に要約する。
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 この三次提言は当初の「透明性改善策(Transparency Initiative)」の計画にはなかったものだが、専門委員会の報告によると、製薬企業側からの、FDAの作業や意思決定に関する情報が欲しいという要望をはじめ第二次提言に対する多くのコメントを受けて、提言に取り入れられたようである。
 5つの提案といくつかの行動項目を以下に示した。
(1)FDAから企業への情報提供の方法:例えば
・FDAが規制する製品の規制プロセスの要点、企業から頻繁に出される要望事項に関して「企業向け“FDA Basics”」をWeb上に構築する(Action 1)。
・FDA職員が外部でおこなった講演のパワーポイントのスライドを公表する(Action 6)。
(2)承認申請された製品の審査の方法:例えば
・FDAの中心的な指針(Center guidance)のすべて、およびFDA職員と企業責任者との会合に関する標準的な作業手順を「企業向け“FDA Basics”」に公開する(Action 7)。
・審査が予定どうり進行しているかについて、どのように申請者に知らされるのか「企業向け“FDA Basics”」で説明する(Action10)。
(3)指針(guidance)の作成:例えば
・指針の作成の際に、どのように外部の人間が情報を提供できるのか「企業向け“FDA Basics”」で説明する。すでに取り下げられた過去の指針および将来に指針となる可能性のあるトピックスについてもリストアップする(Action12)。
(4)規制ルール(regulation) の作成
(5)輸入に関するもの

 第二次提言には、企業が従来、機密としていた事項の公開も提言されておりこれに対して企業側は懸念を示していた。特に、新薬承認などの承認申請に関する情報公開の項で、承認されなかった場合にも“FDAから申請者への返信”内容を公開することについて等である。これに対し、この三次提案の内容は、企業側の懸念に対して企業側からの要望を取り入れることによりバランスをとる形となっている。一方、アメリカ研究製薬工業協会(PhRMA)は「審査過程で浮上してきた焦点となる問題については、審査委員会に企業側責任者が参加できる機会をつくるべきだ」と提案していたが、これに対しては「現状の資金では審査効率を下げずにFDAスタッフが委員会の回数を増やす事はできない」と専門委員会は退けている。これは、ユーザーフィー問題がからむ難しい課題であろう。
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 開かれた政府を目指すオバマ大統領の指令のもとで、この専門委員会は、FDAの手元にあり機密あつかいにされているすべての情報の“棚卸し”を行い、ひとつずつ検討したようである。一次から三次までいずれの提言にも、素案について60日間のパブリックコメントの募集を行っている。専門委員会は、提言を実行する場合の難易度、実行の優先順位、またその資金源などは考慮せずに素案を作成したと述べているが、どのように実を結ぶか見ていきたい。     (ST)

訳注1) Phase I、 Phase II、 Phase IIIを第一次提言、二次提言、三次提言と訳した。
「FDA Basics」の“FDA TRACK” (※4)をみると、FDAの新しい組織がわかる(ただしかなり複雑)。