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SJSに対する遺伝的マーカー(SJSの予知に関連して)

2004-07-12

[キーワード: SJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)、TEN(中毒性表皮壊死症)、遺伝的マーカー、SJSの予知]

 SJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)やTEN(中毒性表皮壊死症)は、ある種の薬剤で全身の皮膚、眼、口腔などに症状があらわれる命をも脅かす病変です。これらの病変については、症状の起こる仕組みや予知の方法に関して、まだ殆どわかっていないのが実情です。そうした意味で注目される報告として、台湾の研究者たちによる「スティーブンス・ジョンソン症候群に対するマーカー」が、ネーチャー誌2004年4月1日号(428巻486ページ)に掲載されていますので内容を要約します。

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 てんかん発作などに汎用されるカルバマゼピン(テグレトール)によるSJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)と遺伝的マーカーヒト白血球抗原(組織適合抗原)HLA-B*1502との間に、漢民族において、強い関連があることを示すデータが得られた。

 カルバマゼピンの服用でSJSを発症した患者44名を検討したところ、5名はTENを併発していた。カルバマゼピンを3か月以上投与して有害反応のない101名の患者(カルバマゼピン寛容群)と93名の健康人を対照にして、157名(すべて台湾に住む漢民族)について薬物代謝酵素チトクロームP450の遺伝子型およびHLA-B,-C,-A(ヒト白血球抗原、組織適合抗原)および-DRBI対立遺伝子の遺伝子型を検索した。

 その結果、HLA領域におけるある種の遺伝子は、対照と比較して、SJS患者では高頻度で見出され、とりわけ、HLA-B*1502はSJS患者の100%(44/44)に見られたのに対し、カルバマゼピン寛容患者では3%(3/101)、健康人では8.6%(8/93)に見られたにすぎなかった。HLA-B*1502の検出は、カルバマゼピンによるSJS発症の予知に非常に有用であると考えられる。HLA-B*1502対立遺伝子が、白色人種の場合わずか1-2%であると報告されているのに対し、漢民族においては8%の人に存在するという事実は、白色人種でのSJS発症率が低いことを説明するかもしれない。

 この事実は、重篤な皮膚有害反応を予知するための信頼性の高い遺伝子マーカーとなる可能性を示しており、SJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)の病因を議論するためにも役立つものである。
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(T)

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