ＡＲＢ降圧剤と心血管イベントのリスク
2010-11-24
(キーワード：グレー情報の早期公開，心血管死亡，オルメサルタン，２型糖尿病)
ＦＤＡの薬剤安全性に関するコミュニケーションとして「グレー情報の早期公開」を行っている。6月11日に発表された情報（※１）で、降圧剤であるアンジオテンシン受容体拮抗剤（ＡＲＢ）の1つであるオルメサルタンを用いた２つの臨床試験で、オルメサルタン投与群で心血管イベントが有意に多かったという情報を紹介している。ＦＤＡはこの２つの試験のオリジナルデータをレビューし、その評価結果を発表する予定だとしている。他の、非常に多数の臨床試験でＡＲＢは心血管イベントが少ないという結果が出ており、現時点でその評価を変えるものではないが、注意し、情報があれば報告を寄せてほしいとしている。以下がデータの要約である。
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ＲＯＡＤＭＡＰ（Randomized Olmesartan and Diabetes Microalbuminuria Prevention Study）
ヨーロッパで行われた、オルメサルタンが微小アルブミン尿症の発現を遅らせるかどうかを評価することを主目的とした無作為二重盲験プラシーボ対照多施設共同研究である。4447人の2型糖尿病で少なくとも1つ以上の心血管リスク因子を有するが明らかな腎症を認めない患者が対象である。1日40mgのオルメサルタンまたはプラシーボのいずれかを服用し、ACEI（アンジオテンシン�曲儡更攸覗乏穏沺法�ARB以外の降圧剤の併用は許可される。大部分の患者は3〜5の心血管リスク因子をもち、80%の患者は他の降圧剤を併用していた。平均服用期間は39カ月である。
オルメサルタン投与群（ｎ＝2232）とプラシーボ投与群（ｎ＝2215）の全心血管死亡は15人対3人で、全死亡は26人対15人であった。
ＯＲＩＥＮＴ（Olmesartan Reducing Incidence of End Stage Renal Disease in Diabetic Nephropathy Trial）
日本と香港で行われたオルメサルタン（対プラセボ）の糖尿病腎不全の進行に関しての有効性と安全性を評価することを主目的とした無作為二重盲験プラセボ対照多施設共同研究である。2型糖尿病で腎症のある566人の患者が対象である。10〜40mg/日のオルメサルタンかプラシーボのいずれかを服用し、ARB を除きACEIを含む他の降圧剤の併用は許される。一次複合エンドポイントは、血清クレアチニン値が2倍になるか、末期腎不全、死亡のいずれかが最初に起きるまでの期間である。
オルメサルタン投与群（ｎ＝282）とプラシーボ投与群（ｎ＝284）の全心血管死亡は10人対3人で、全死亡は19人対20人であった。
両試験における予期していなかった結果は、プラシーボ群に比べてオルメサルタン群で心血管死亡が増加したことである。
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ＡＲＢは心保護作用、腎保護作用があるとして、糖尿病などが基礎疾患にある高血圧患者に広く用いられている。ＡＲＢでかえって心血管イベントが多いというデータが信頼性のあるものであれば、これまでの評価は大きく変わることになる。早急なレビューを期待したい。（Ｎ）
