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ステロイド吸入剤フルチカゾンによる副腎機能抑制のリスク

2004-07-12

 [キーワード: ステロイド吸入剤、フルチカゾン、喘息、有害反応、 副腎機能抑制]

 喘息発作予防の標準薬剤の1つとしてステロイド定量噴霧式吸入剤が挙げられますが、そのなかでフルチカゾン製剤(商品名フルタイド)は、他と異なり、ステロイドが多く吸収されて、人体が有する副腎機能の抑制につながる危険を有していると、NPO医薬ビジランスセンターの浜六郎さんが「月刊金曜日」誌(2004.2.13)、「薬のチェックは命のチェック」誌14号(2004.4.20)、TIP(正しい治療と薬の情報)誌19巻3号(2004.3.28)などで指摘し、注目されています。

 カナディアン有害反応ニュースレター13巻4号(2003.10)は、このフルチカゾンによる副腎抑制の危険性について警告を発しています(※1)。またWHOも、医薬品ニューズレター(2004年1号、6ページ)でこれに注意を促しています(※2)。

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 ステロイド吸入剤は、喘息のコントロールや悪化の予防に非常に効果的ではある。しかし最近、これを用いた成人・小児で、副腎不全の報告がよく見かけられるようになってきた。どのステロイド吸入剤でも副腎不全を引き起こす可能性はあるが、フルチカゾンを用いた場合の報告がとりわけ目立つ。

 これは、同剤の薬理作用がきわめて強いことに原因がある。フルチカゾンは、ブデソニドやベクロメタゾンの2分の1の用量で薬理学的効果があらわれる。これに加えて、同剤は他の吸入ステロイド剤に比べ、承認された用量より過量に処方されることが多いという事情も関係している。

 1996年1月から2002年の9月末までに、ヘルスカナダ(規制官庁)は、吸入フルチカゾンによると疑われる9つの副腎不全の報告を受け取った。一方、吸入ブデソニドやベクロメタゾンによるものは皆無であった。

 9つの報告のうち、5つは4-13歳の小児で、フルチカゾンを1日に250-1100マイクログラム吸入しており、4例では1000マイクログラムを越えていた。副腎クリーゼ(急性副腎不全)を起こしたのは2人で、1人は男の子、1人は72歳の男性であった。

 一定の範囲を超えて吸入ステロイドの量を増やすことは、ベネフィットがなく、全身的な有害反応のリスクを増すことを、臨床医は心に留めておく必要がある。カナダの喘息コンセンサスガイドラインは、一旦最善の結果が得られた後は、コントロールを維持するのに必要な最小量を決定するため、適切な間隔で、用量を減じるべきであると指摘している。

 患者と両親には、吸入ステロイドの使用に伴う副腎抑制の徴候・症状とそのリスクについて知らせておくべきである。副腎抑制は用量の減少で元に戻る。しかし、急に使用を止めると重篤な有害反応のリスクがあることを、患者と両親には注意しておかねばならない。
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(T)