臨床試験結果の登録で次に必要なものは？
2010-08-31
（キーワード：臨床試験登録制度、米国国立衛生研究所(NIH)、FDA再生法(FDAAA)、臨床試験結果の公表）
近年、世界的に臨床試験情報の登録、公開が進んできているものの、課題も多く残されている。JAMA2010年2月24日号論説（JAMA,February 24,2010 Vol 303,No.8 773−774）では、臨床試験登録のこれまでの歴史を概観し、とりわけ医薬品臨床試験結果の登録・公表について、米国での現状と研究資金を提供するNIH(国立衛生研究所)が追求していくべき方針などについて論じている。著者たちはプロトコールと患者レベルでのデータの公表の重要性について強調している。以下はその要約である。
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１ 2000年に米国国立衛生研究所(NIH)が設立したClinical Trials.gov（米国医学図書館運営 臨床試験登録公開のWebサイト）への登録が必要な臨床試験は、これまで、重症または致死的な疾患の治療の医薬品を評価する臨床試験だけだった。当初は、この登録の遵守すら徹底されなかった。また、FDA再生法の成立前までは、臨床試験結果の公表は求められなかった。
２ FDA再生法の成立を受けて、議会は、米国国立衛生研究所(NIH)に、2010年9月までに臨床試験のスポンサー(臨床研究を企画・実施・資金調達する個人または組織)がClinicalTrials.govで臨床試験の完全な結果の公表をする新たな規則の制定及びFDAに承認された医薬品の臨床試験結果(第�義蟷邯海鮟�く)の基本データの公表を指示した。基本データには、適切な試験に伴う統計的有意性のある値の表が含まれなければならず、臨床データの概要のみでは要件を満たさない。しかし、臨床試験結果の公表は、医薬品の承認後でもよいとしたので、臨床試験が完了しても、FDAで承認や新適応の結論が出るまでは、ClinicalTrials.govに基本的な結果すら掲載しなくてもよくなってしまうという問題がある。
また、議会は、米国国立衛生研究所(NIH)に、非承認となった医薬品の臨床試験の結果をスポンサーに公表させる必要があるかどうか検討するよう指示しているが、公表させるべきであろう。
３ 米国国立衛生研究所(NIH)がこうした新たな規則を制定するにあたっては、
・スポンサーに全てのプロトコル（臨床試験実施計画書）をClinicalTrials.govに公表させるか
・主要評価項目、副次評価項目の解析を出すために全患者データを公表させるかという２つの重大な問題がある。
これまで、 FDAは、承認を支持するデータの要約のみ公表し、プロトコルを含むアプリケーションや患者レベルデータは知的財産情報であるとして公表しなかった。しかも、このデータの要約も、大抵、スポンサーが作成したものであり、FDAの医薬品審査の過程は不透明であった。
臨床試験登録で完全なプロトコルを作成させることや臨床試験で集約された患者レベルデータは、独立した研究者にとって、オリジナルの研究者の分析を点検するために重要であり、科学的研究方法にとって主要なプロセスである。
また、議会は、米国国立衛生研究所(NIH)に対し、「報告方法への追加または変更」に関する規則において主要評価項目および副次評価項目の解析結果の値を要求することを検討させた。これが実現されれば、米国国立衛生研究所(NIH)は、すべての患者レベル解析に関するデータを報告することを要求できるようになるであろう。
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臨床試験登録制度に関しては、登録する臨床試験の範囲と公開される内容、結果の公表と公表されるデータの範囲、公表の時期などが問題となる。当会議では2005年3月に厚労省と日本製薬工業協会に、以下の３点について要望書を提出した（※1）。
１ 登録制度においては、検証的試験だけでなく、探索的試験も含め、すべての臨床試験を対象とすべきである。
２ 臨床試験の被験者募集開始時点までには、試験計画書（プロトコル）が公表され、また試験計画書に変更があった場合には、変更時期も含めて変更内容が公表されるべきである。
３ 新薬として、あるいは新適応症として承認される医薬品については、すべての非臨床および臨床試験結果が、承認後速やかに、遅くとも販売開始時には公表されなければならない。
医薬品の新規承認や適応症拡大が、その医薬品に都合の良い結果が得られた臨床試験のみを根拠にしているのではないかという疑いをもたれないためには、その医薬品に関するすべての臨床試験を登録し、全てのデータを公表することが必要である。（G.M）
