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リリー社が米国医師への顧問料・講演料支払いリストをインターネット公開

2009-11-18

(キーワード: リリー社、医師への支払いリスト、情報公開)

 米国では、製薬企業から医師などへの支払いが医薬品価格に跳ね返り、また処方内容にゆがみをもたらすなどの指摘から、透明性確保が大きな動きになっている。
 2008年12月の注目情報(※1)で、リリー社が率先して2009年度後半期から米国医師への顧問料・講演料の支払いを開示し、2011年までには開示の範囲を旅費・贈り物・臨床試験費用などに拡大すると発表したことを紹介した。リリー社は、2009年7月に公約どおり、インターネット上で支払リストを情報公開した(※2、※3)。リストは4半期ごとに更新される。
 ピンクシート誌2009年10月19日号が「リリー社の社外“専門技能スタッフ”(Outside”Faculty”)は5万ドル(約500万円)以上を受け取る22人の医師が上位にいる」というタイトルで、「リリーの5万ドルクラブ」と題した医師の一覧表を掲げ記事にしているので、要旨を紹介する。
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 2009年7月31日リリー社は2009年の最初の4半期の外部医師への顧問料・講演料支払いを公開した。リリー社は3400人の医師に計2200万ドル(約22億円)を支払っているが、22人の医師が5万ドル(約500万円)から7万ドル(約700万円)を受け取っている。うち15人が精神科医である。リリー社はこれらの支払い対象医をリリーの専門技能スタッフ(faculty)と呼び、リストをリリー専門技能スタッフ登録(Lilly Faculty Registry)と名付けている。
最高額はカリフォルニアの精神医Manoj Waiker氏が支払を受けた7万50ドル(約700万円)である。ピンクシート誌のEメールインタビューにWaiker医師は、最初は情報開示は医師への攻撃でないかと当惑があったが、患者に話したら理解され、公開はGood Ideaだと考えを変えたと返答した。
 この2200万ドル(約22億円)の支払は、リリー社が販売促進経費として支出している総額からいうとごくわずかの金額であり、リリー社が営業・販売・管理費として最初の4半期に使った15億ドル(約1500億円)の1.5%に過ぎない。
 製薬企業の医師への支払いは、米国ではバーモント州・マサチューセッツ州などが州法で公開を義務付けている(※4)。米国全体(連邦レベル)では、支払い情報の公開が上院・下院ともに保健改革法案(health reform bill)の「サンシャイン条項」(陽の光のもとに明らかにする意味でこの名が付けられている)の形で取り込まれ審議されている。保健改革法案は、年内成立の可能性が強まったと報道されている。
 全く遅れていた日本の取り組みであるが、国際的な動きの中で最近動きのあったことを共同通信が2009年9月7日に報道している。同通信は、日本製薬工業協会(製薬協)が、企業から医師ら医療関係者への資金提供について、9月中にも情報公開に向けた議論を本格化するとした。但し公開については「(謝礼を受け取る)相手側の医師の意見を聴く必要がある.」(製薬協幹部)との指摘が有るほか、「他社に研究の手の内を明かすことになる」との企業側からの反発も予想され、「実現までのハードルは高そうだ」ともコメントしている。
 製薬企業の医師への支払いの透明化に向け、取り組みを強める必要がある。 (T)