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ハーヴァード大学が、有名な精神科教授の企業からの資金受領開示もれで、指針見直し

2008-08-29

(キーワード:ハーヴァード大学医学部、NIH資金の利益相反管理、ビーダーマン教授)

抗精神薬の小児への適用を研究している世界的に有名なハーヴァード大学教授が、同僚と共に製薬会社から多額の資金を受け取っていたが、資金開示報告書は全くのでたらめだった。大学やその関連施設を巻き込んで、国立衛生研究所(NIH)からの資金監督の見直しが要求されている。以下はBMJ誌2008年6月14号記事の要約である。
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 ハーヴァード大学の有名な精神科教授が製薬会社から受け取った収入を報告しなかったことが発覚し、ハーヴァード大学、付属病院の一つそして、国立衛生研究所(NIH)が騒動の中にいる。
 チャールス・グラスリー上院議員の調査は、精神科医であるジョセフ・ビーダーマンと2人の同僚トーマス・スペンサーとティモシー・ウィレンズが、合計3人で2000年以来製薬会社から420万ドル(約4億5千万円)以上を受領していたことを明らかにした。グラスリー上院議員によれば、この3人の医師による資金開示報告漏れは、「全くめちゃくちゃ」で、報告書では彼らが過去7年間に‘2-30万ドル’(約300万円)しか受け取っていないことになっていたのだ。
 研究者の申告漏れは、「利益相反に関するNIH規則」違反であり、NIHからハーヴァード大学とマサチューセッツ総合病院への資金提供を危うくさせるものだとグラスリー上院議員は語った。
 グラスリー上院議員の非難発言に対し、ハーヴァード大学医学部の責任者は「ハーヴァード大学医学部の利益相反方針は厳格で、包括的なものであり、医学部の中でも最も高い基準を設定している」との声明を出した。大学当局はさらに「我々はこの問題を真剣に考慮し」、「利益相反方針の全校規模での見直しに参加し」「学部の研究者の開示形態の調査のために、ランダムに選んだ研究者への詳しい聞き取り調査を行なう」と付け加えた。
 グラスリー議員は、NIHから資金を受け取る一方で、利益相反の資金報告を隠したり、洩らしている他の有名な研究者たちをも指摘した。グラスリー議員は、6月4日付けのNIH所長エリアス・ゼルホウニ宛の手紙で「NIHが大学に配分している資金の中で、利益相反の監督が欠如している資金は年間ほぼ240億ドル(約2兆6千億円)にもなっており、私の懸念は大きくなっている」と書いた。彼は、ゼルホウニ博士が、「大学に提供する資金プログラムのより有効な監視と透明性のために、どのような行動をNIHが今までとってきたのか、また今後とろうとしているのか説明すること」を要請した。
 このスキャンダルの中心人物であるビーダーマン教授は、世界的に最も影響力のある精神科医の1人として知られている。小児の双極性障害診断のリーダー的な提案者であり、双極性障害を持つ4歳から6歳の子どもたちの抗精神病薬クェティアピン(セロクエル)の研究を現在遂行中である。  (KN)

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