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FDA諮問委員会における利益相反ルールの広範な除外に対して厳しい批判;アバンディア(ロシグリタゾン)の諮問委員会では6人もの除外を認めた

2007-10-17

(キーワード:利益相反ルール,FDA諮問委員会、例外規定,アバンディア(ロシグリタゾン))

 当ホームページの2007年6月20日付け注目情報にて、FDAが諮問委員会の利益相反をスクリーニングする際のルールとして、年間5万ドル(約600万円)で線引きする規制を提案したことを紹介した(※1)。
 上記FDAの提案ルールでは、利益相反の除外者(利益相反ルールに該当するにもかかわらず排除されない人を示す)の人数までは決めていないが、米国議会では、1委員会当たりの除外者を1人に制限することを求めた。
日本では、本年(2007年)9月3日「厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会」による指針案の検討を開始した。指針案では「産学官連携活動が盛んになれば、利益相反が必然的・不可避的に発生する」とし、「わずかでも利益相反が考えられる研究者を直ちに排除すると、(中略)厚生科学研究に応募する研究者の減少、研究の質の低下等も懸念され、適切ではないと判断される」としている(第4回検討会 資料1-3「基本的な考え方(案)」2007年9月3日、※2)。
米国議会での厳しい除外規定の要求に対し、法による専門家の排除をめぐって議論がなされており興味深い。以下にFDCレポート・ピンクシート誌2007年7月30日号記事の要旨を紹介する。
なお、当会は同年9月25日に「審議参加と寄付金等に関する基準策定ワーキンググループ」ヒアリングに対して意見書を提出した。当ホームページに公開しており(※3)、活発なご意見を期待する。
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FDAの医薬品関連諮問委員会に招集されている専門家の大部分は、議会で決定されようとしている利益相反の規定に違反するであろう。
 下院は、医薬品ユーザーフィー法を改定する一部として、委員会に1名に限り除外を認める−委員会は必要ならば金銭的つながりのある専門家1名を委員として提案することができる−ことを可決した(ピンクシート誌2007年7月16日号)。

 この規制が実現すれば、FDAに誰を除外者に該当させるかの厳しい判断を迫ることになるだろう[註]。
  ピンクシート誌の分析によれば、2007年に関して、情報のある13の諮問委員会のうち、9つは金銭的つながりのある多数のメンバーを有している。医薬品関連委員会では、平均して2.6名が金銭的つながりをもっている。
最多の委員会は直近の2つの委員会である。7月24日のリリー社のエビスタ(ラロキシフェン)とGPCのオルプラットナ(サトラプラチン)に関する抗ガン剤諮問委員会と、7月30日のグラクソスミスクライン社のアバンディア(ロシグリタゾン)に関する内分泌代謝系医薬品・リスク管理合同諮問委員会では、6名もの除外者が認められたのである。
 
FDAの草案は除外にできる人数は定めていないが、利益相反の規制値を5万ドルとした(ピンクシート誌2007年3月26日号)。
アバンディアの委員会では、6名の除外者のうち2名が5万ドル(約600万円)を超えている。1名の除外者は、クリーブランドクリニックのスチーブン・ニッセン氏である。彼は関係文献の総合解析によりアバンディアの心血管系リスクを明らかにし、アバンディアの安全性に社会的な注意を向けさせた(※4)。彼は競合会社からの50万ドル(約6000万円)を超える金品受領を含めた自身の契約を明らかにした。FDAが上限を新たに規定するならば、彼は除外される運命にあることは明らかであろう。現在の委員会構成に批判的な多くの人にとっても、ニッセン氏が除外されるとは考えがたく、公正な外部審査を認めるシステムを作成する難しさを示している。

 米国の薬学研究者と製薬関係者は、議会が検討している除外規定により、トップ専門家の関与を失う可能性を心配している。科学制御問題副会長カロライン・ロー氏は、特定の専門分野では候補者の人数が限られており、法律が専門家を諮問委員会での討議から閉め出してはならない。あまりに制限的すぎると7月18日のヘルスケアージャーナリストパネルで語った。
それに対し、以前FDAにいたスーザン・ウッド氏(ジョージワシントン大学)は、利益相反基準を厳しくすることにより諮問委員会に必要な専門家が求められないという主張に反対を表明し、諮問委員会の専門家は高々500人までだが、医学部の学部メンバーは12万人、薬学部は4000人、公衆衛生学は7,500人おり、たとえ利益相反がある委員が高率であるとしても、人材は十分にあると語った。
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[註] その後の情報として、米国下院法案では、諮問委員会あたりの免責者は1人だけとしたが、上院法案ではこの制限を適応せず、妥協のもとで、「FDAは2007年度内の除外者の比率を決定すること。そして、2012年まで毎年5%ずつ除外者を減らし、最終的に25%減らさなければならない」とするFDA改革法が9月19日に成立、9月27日大統領がこれに署名した(スクリップ誌2007年10月3日号)。  

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