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欧州共同宣言:「自立する市民(empowered citizens)にとって、適切な保健・医療情報とは何か?」

2007-04-20

(キーワード:市民が必要とする保健医療情報、共同宣言、欧州医療関連組織、製薬企業による情報提供・販売促進)

 欧州のヘルスケア・システムに対して、常々活発な活動を行いさまざまな提言を行って
いる5つの医療関連組織HAI,ISDB,AIM,BEUC,MEFが協力して、2006年10月3日に保健・医療情報に関する重要な共同宣言を行った(※1)。このような共同宣言が発表された背景には巨大製薬産業が対消費者直接広告(DTC広告)、疾病認識キャンペーン、服薬遵守プログラムなどを通じて、消費者教育や消費者への情報提供という名のもとに実は強力な販売促進活動が展開されているという実態がある。以下に共同宣言の内容を要約して紹介する。
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 宣言ではまず冒頭に、その宣言が出される目的と背景が簡単に述べられたのち、
1)一般市民が必要とする「保健・医療情報(Health Information)」の定義が記される。
  市民にとって適切な保健・医療情報とは
   (a)信頼性:エビデンスに基づき、偏りのない、最新の情報であると同時に、情報源の人的・経済的透明性が確保される必要がある。
   (b)比較可能性:危険対益比、無治療もひとつの選択としてとらえ、疾病自体の自然経過までも含んだ、すべてを考慮した比較でなければならない。
   (c) 適用性:消費者にとってアクセス・理解が容易であり、しかもそれぞれの国民の文化的背景も考慮した上で、実際に適用できる情報でなければならない。
ついで、これらの情報を得るための知識として、
2)関連健康情報の評価や利用に必要なツールが紹介される。
さらに、
3)当該健康情報にアクセスするにあたっての障害因子が分析され、
これらの障害因子があるにもかかわらず、
4)欧州で、また世界各地で試みられている、さまざまな積極的な取り組みが例示される。
これらの取り組みは、EU加盟国あるいは他の国の政府レベルでの試みとして行われている
ものもあり、医療専門家集団による選択、あるいは、消費者自身による取り組みもある。
宣言では、こうした問題点や事例を紹介したのちに、
5)改善のための提言として、つぎのような8点をあげて、締めくくりとしている。
  (1)規制当局に対する透明性確保の要求
  (2)製薬会社の添付文書情報に関する義務の履行
  (3)情報源の拡大と強化
  (4)患者・医療者間のコミュニケーションの最適化
  (5)副作用監視システムの一員として患者を組み入れること
  (6)個別患者のニーズを考慮すること
  (7)医療情報に関係する人々の間にみられる混乱に終止符を打つこと
  (8)医薬品の宣伝販売促進活動に対するEU当局の規制強化と維持

                                (B)