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FDA前長官が利益相反と経済関係情報非開示の罪を認める

2007-02-13

(キーワード:レスター・クロフォード、FDA長官、株保有、利益相反)

前FDA長官レスター・クロフォード氏は、2006年10月、利益相反に関連した2つの罪を認めた。
クロフォード氏は、かつて緊急避妊薬「プランB」のOTC化(2006年8月にOTC化承認)を遅らせたとして注目された長官である。緊急避妊薬「プランB」のOTC化の遅れが問題となっていた2005年当時、FDA長官代理だったクロフォード氏は、FDAの処置を決定するという条件で、2005年7月に長官に任命されたにも関わらず、就任後の8月末に“決定延期の決定”を下した。これに対しては、当時のFDA副局長(兼女性健康部長)が、「FDAが科学的データよりも政治的判断(共和党支持基盤である、中絶反対の立場をとる保守派層の意見を考慮)を優先させた」として抗議の辞任をしたという経緯がある。その後、クロフォード氏は長官就任からわずか2ヵ月後の2005年9月に辞任している。
クロフォード氏辞任後、上院および下院議員がクロフォード氏に対する調査を求めていたが、今回クロフォード氏がFDA時代の利益相反に関連した罪を認めたものである。以下は、そのことを伝えるBMJ誌の記事(※)の要約である。

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FDA前長官レスター・クロフォード氏は、2006年10月ワシントン連邦地方裁判所において、利益相反とFDA所管企業の株保有情報の非開示という2つの罪を認めた。
米国司法省によれば、クロフォード氏の罪のひとつは、米食品飲料大手のペプシコ社、米食品卸大手のシスコ社、キンバリー・クラーク社といったFDA所管企業の株を保有しているにも関わらず、すでに売却していたと虚偽の報告をしたり、また、シスコ社、キンバリー・クラーク社の株保有に伴う収入の報告もしなかったというものである。もうひとつの利益相反の罪とは、彼がシスコ社、ペプシコ社の株を保有していた当時、FDAの肥満作業部会議長を務めており、この作業部会は食料品や飲料のカロリー表示の改定を勧告する役割を担っていたことから、利益相反にあたるというものである。
ジェフリー・テイラー連邦地方検事は「職業倫理法の最も重要な原則のひとつは、行政官はいかなる政策決定においても金銭的利害を持ってはならないということである」とし、「クロフォード氏は、行政官として最も重要な職務にあったときに、露骨にこの原則を踏みにじったのである」と指摘した。
クロフォード氏は、獣医師資格も持つ食品安全性の専門家としてFDAで長年に渡って仕事をし、長官代理を務めたあと、緊急避妊薬のOTC化に関する決定を出すことに同意したうえで、上院により2005年7月に長官就任が認められた。しかし、就任後クロフォード氏はその決定をさらに延期したのである。
ロサンジェルス・タイムズの社説は「現在FDAにおいては、職業倫理に関する問題の調査が求められており、信頼性の危機に直面している。行政官は安全性問題専門家の意見をしばしば無視し、重篤な副作用のサインを示している医薬品への対策を拒んできた。バイオックスの例がそうである。また、緊急避妊薬プランBのOTC化問題では、科学的判断によらず、政治的圧力の影響を受けるという事態に至った経緯もある。」と指摘している。(Y)